コロナ禍で多くの人が生活の変化を余儀なくされ、不安やストレスを抱えている。いま、各種の電話相談にはさまざまな悲鳴が寄せられている。

 日本産業カウンセラー協会が行う「働く人の悩みホットライン」には、在宅勤務の孤独感や、「マスクをつい買いだめしてしまう私は変ですか」といった相談がくる。特に多いのは感染への不安だ。同協会のシニア産業カウンセラー、伊藤とく美さんは「不安へは『反応』ではなく『対応』して」とアドバイスする。

「コロナを怖いと思うのは当たり前のこと。ただ怖がるのではなく、自分がマスク着用など対策をとれているか客観的に見て、できていれば『これでよし、大丈夫!』と声に出してみる。距離を置いて不安を見ることが大切です、と伝えます」

 日本臨床心理士会が行う「新型コロナこころの健康相談電話」には、週に80人ほど相談がある。電話相談を担当する60代の女性によると、ストレスによる不眠や過呼吸、子どもの将来への不安など内容は多岐にわたる。対処のポイントを伝え、根気よく耳を傾ける。

 なかでも多いのが、コロナで物理的な居場所を奪われた人からの相談だ。「ステイホーム」といわれるが、家は万人にとって理想の居場所ではない。精神疾患のある人や高齢者が利用していたデイケアや通所作業所、アルコール依存症のグループミーティング、ひきこもりの人を対象とした喫茶室などでの集まり、スクールカウンセリングなど、何とか居場所を見つけて通っていた人たちが、コロナで居場所を閉じられ、孤立している。相談員の女性は言う。

「家族関係が良くないなどの理由で家にも居場所がなく、いつもなら喫茶店や図書館を転々とする人が、いまはそれもできず、『公園のベンチからかけています』と。一人暮らしの高齢者で楽しみにしていた趣味の場がなくなり、『思わず叫びたくなる』といった痛切な訴えもあります」

 電話相談が代わりの居場所になっている側面もあるという。

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