「繰り返し利用する人も多いです。話すことで少し安心してその日を過ごせることもある。ぜひ活用してほしい」

 ひとつの居場所がなくなることが、社会的に弱い立場にいる人に強いストレスを与えている。人形町メンタルクリニック院長の勝久寿医師は、仕事、家庭、友人、趣味など「複数の柱」に支えられ生活し、それらが相互に補いバランスを保っている人との違いを、こう説明する。

「高齢者、子ども、心身に重い病気を抱えている人たちは、どうしてもデイサービス、学校、病院、自助グループなど『一つの柱』の重要性が高くなり、その他の柱を充実させることが困難になります。柱とは『居場所』でもあるため、そこへのアクセスが断たれると生活のバランスが崩れ、メンタルの不調が表れやすくなるんです」

 では、代わりの居場所をどうつくればいいか。関西大学教授で心理学者の串崎真志さんは、情報格差に影響されやすいオンラインよりも、電話相談など従来型のサービスの方が確実に助けになる人がいると考えている。

「いずれにせよ、人から温かい言葉をもらえるかどうかがポイントだと思います。ソーシャルディスタンスが求められる状況で、お互いに温かい言葉を渇望しているのでは。無理して明るく振る舞ったり、優しい言葉をかけなくても、『おはよう』『いかがお過ごしですか』といった何げない挨拶(あいさつ)で、気遣いは伝わります」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2020年6月1日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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