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福岡伸一「新型コロナで注目されるBCGとツベルクリン検査の関係性」

連載「福岡伸一の新・生命探検」

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新型コロナウイルス(c)朝日新聞社

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福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

 メディアに現れる生物科学用語を生物学者の福岡伸一が毎回一つ取り上げ、その意味や背景を解説していきます。今回は、新型コロナウイルス感染への影響でも注目されている「BCG」と「ツベルクリン反応検査」について取り上げます。

【グラフ】BCG接種を継続する日本などと接種しない欧米諸国における感染者数の差

*  *  *
 ある感染症に対して免疫があるかどうか、それを生物学的に判定するのはかなり難しい。いちばんストレートなのは、ツベルクリン反応検査のように抗原を投与し、それに対して免疫反応が起きるかどうかを観察する、というものだ。

 ツベルクリン反応の抗原とは結核菌のことだが、もちろん結核菌をそのまま注射するわけではなく(そんなことをしたら戦前の生体実験みたいになってしまう)、シャーレで培養された結核菌を加熱殺菌したあと、濾過、タンパク質成分を抽出し、凍結乾燥した精製品を用いている。この精製品自体には結核の感染性はなく、検査自体の安全性も約100年の歴史を経て確立されている。

 感染性はないが、菌のタンパク質が皮下に入るので、すでに免疫を持っている人なら、皮膚が赤く腫れる。つまり、免疫細胞が抗原に対して集合し、炎症反応が起きる。この赤班の大きさを測定する。一般的には直径が10ミリ以上で陽性と判定される。

 私たち昭和世代の人間は、ツベルクリン反応が陰性なら、結核予防のため、BCG(いわゆる9本針のスタンプ注射)を打たされた。BCGとは、カルメット・ゲラン桿菌(かんきん=Bacille, フランス語読みなので逆順)の略称で、継代培養によって無毒化された結核菌のこと。結核を起こすことはないが、身体には結核菌として認識され免疫が成立する。今後、結核にかかることはまずなくなる。

 現在、日本人は生後1歳までに、ツベルクリン検査せずに、全員がBCGを投与することになっている。このような日本人がアメリカで生活を始めると、いささかやっかいなことになる。特に生徒・学生、新規採用、移民申請などの場合、健康診断書の提出が求められる。学校・会社では、日本のような集団検診みたいなことはしてくれないので、各自、かかりつけの医者をみつけて自費で健康診断を受けることになる。


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