3月下旬、夫が39度の熱を出した。2日後に下がったのでPCR検査は受けられなかったが、その後、娘がせきと高熱、揚げ句には自分もひどいせきに見舞われた。数週間後、マイコプラズマ肺炎だったことがわかったが、病名が判明するまで絶望的な気分だったという。

「コロナ家族と近所に知れ渡ったらどうしよう、と気が気ではありませんでした。『あのマンションで出たんだってよ』とうわさされたら外も歩けなくなる。そうなったらご飯も買えず、家族が機能停止になってしまう」

 それだけではない。「夫婦間除菌リテラシー」の違いもストレス源だ。

「自分は危機意識を強めに持っているほう」という女性は、家では常にアルコール除菌剤を離さず、ネットの動画で見た「除菌の心得」を忠実に実行する。使い捨て手袋を愛用し、家族のタオルは別々にして頻繁(ひんぱん)に替える。

 それなのに夫は除菌の概念もなく、買い物に出かけた先でベタベタとどこでも触るので腹立たしい。家族の体調に気を揉みながら、地域と会社でのうわさの広がりに怯え、「除菌疲れ」でストレスはピークに達した……。

 そのほか、アンケートで具体的に挙げられたストレスの原因で、特に目に付いたのは、危機感に対する周囲との温度差がストレスになっているケースだ。

「監視されているようだ」と不快感を示す人もいれば、監視する側に立って周囲の人の行動様式に怒りを表す人もいる。

 ギスギスした空気、同調圧力。

 コロナハラスメントという言葉も生まれつつある。

 いち早くこの問題への取り組みを始めたのは、日本赤十字社だ。3月には「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!」というガイドを作成し、4月には「ウイルスの次にやってくるもの」と題した動画を作成、YouTube上で配信した。この動画はすでに再生回数200万回を超えた。

 一連のガイドや動画は、不安や恐怖にのみ込まれて偏見や差別に加担することがないように啓発するものだ。

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