たとえば売り上げが下がってきた時にどうするか。サイン会などのイベントは参加者分の売り上げが実績として見えやすいが、一過性だ。

「土台となるべき日常の売り場をきちんとしておかないと、売り上げは維持できません。崩れた石垣の上に城が建てられますか」

 20年前に比べると書店の数はほぼ半減し、2割の自治体で「書店消滅」が起こっている。その一方で、入場料をとる書店や独立系の書店のニュースを目にするようになった。

「いわゆる街の書店と独立系の書店との間には溝があるように思います。多様な書店が街にあることが、健全なのではないでしょうか。本を売るために書店ができることは、まだまだあると思います」

(ライター・矢内裕子)

■ブックファースト新宿店の渋谷孝さんオススメの一冊

 SNSで話題の『を拾った話。1』が一冊の本になった。おうち時間にぴったりの、明るく楽しい作品だ。ブックファースト新宿店の渋谷孝さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 SNSで話題になった作品が一冊にまとまりました。タイトルからして、「猫を拾って育てるエッセーコミックかな?」と思って読み始めると、2ページ目でまったく違う異色なギャグマンガだということに気がつきます。

 猫を拾い育てていく作品ではありますが、他人に猫を見せられない理由がとても面白く描かれています。ペットを飼ったことがある人が読んでも「あるある」と思う描写が多く、ペットを飼ったことがない人もこれから飼ってみたいと思わせる作品です。

 猫の正体に感づいている同僚女子に猫を見せる日が来るのか、日々餌を届けに来る宅配便のお兄さんが猫の正体に気づくのか。今後、どんな展開になるのか楽しみです。

 新型コロナウイルス騒動で家に引きこもってマンガを読むなら、明るく楽しいこの作品をおススメします。

AERA 2020年4月27日号