「人による計測は若干の個人差が出るため、AIで計測したほうがより公平に数字が出せる。また、水害後の調査は感染症のリスクも高く、AIの活用で調査員の健康を守ることができる。この技術に世界中の損保会社から問い合わせがきています」(大田社長)

 超離散系数学を使ったAI予測は他にもある。同社は紳士服のコナカと共同で、普段着のままスマホで体の前後左右4枚の写真を撮るだけで、オーダースーツの採寸ができるアプリを開発した。

 スマホアプリによる採寸の例はほかにもあるが、ただ体のサイズを計測するだけでは着心地のよいスーツやシャツは作れない。コナカのテーラーの持つデータをAIに学習させることで、数値だけでは測れないテーラーの勘まで再現した。コナカは当初1~2割は返品や再調整を覚悟していたというが、18年11月にサービスが始まってから再調整の依頼が来たのは1着だけだという。

「GPS(全地球測位システム)に使われたのは100年以上前に確立されたリーマン幾何学で、数学が社会還元されるまでには長い時間がかかる。それはとてももったいないことです。最先端の数学を使った新しい技術で、今の社会課題を解決していきたい」(大田社長)

(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年3月23日号