「阪大の卒業生は、約6千人でしたが、京都市立芸術大学は200人程度。芸大くらいの規模だと顔見知りの学生も大勢いたし、日頃から彼らが何を夢見て、どんなことを心細く思っているのかがわかっていました。そのぶん、いかに“生身”の言葉を届けようかと考えたし、激励の気持ちがこもっていたと思います。そういう意味で、二つの大学の式辞は正反対の気分でもありました」

 コロナウイルスによって、今年も学校行事に影響が出てきている。

「話すときはいつも『こんな社会を手渡すことになってすまない』という、忸怩たる思いがありました。ただ明るくはない未来であっても、これだけは心に留めておいてほしいという願いを、式辞にはこめています」

(ライター・矢内裕子)

■ブックファースト新宿店の渋谷孝さんオススメの一冊

『サイクリングごはん』は、ご当地グルメを自転車でめぐるコミック。ブックファースト新宿店の渋谷孝さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 ある時、心身ともに疲れ、ひきこもりがちの著者が突撃したのはなんと自転車屋。あれよあれよという間に自転車生活がスタート。ママチャリとは違うスポーツバイクに乗ることも初めてでしたが、気づけばぐんぐん遠くへ出かけておりました。

 せっかく出かけたからにはご当地グルメも頂きたいもの。とは言え、スポーツバイクはスタンドが付いておらず自立しないことから、立ち寄れるお店が限られてしまいます。

 そのため、事前に行ってみたいお店にスポーツバイクが置けるか確認をしてお出かけします。裏道に詳しくなったり、偶然よさそうな店も発見したりします。たまには調べた店がお休みだったりもしますが、それも醍醐味。

 大人になってからはあまり乗らなくなった自転車ですが、気楽にまた乗ってみたくなる、そんな一冊です。

AERA 2020年3月16日号