「趣味にお金をかける方は多いでしょう。私にとって、研修のために時間を費やし実費を支払うことは、『好きなアイドルや交響楽団のコンサートのために週末を潰して、交通費、コンサート代を出すことについてどう思われますか?』と聞かれているのと同じことです。みんなのコードの研修はじめ、有意義な研修は、有識者や知見の高い方々、また意識の高い仲間と出会うことができ、様々な知識を得て、またそれを学校で子どもに返すことができるという、私にとって最高の趣味です。研修から私は心の栄養である学びを吸収し、日々のエネルギーをもらうことができます」

 この返答を見て、私の愚問を反省するとともに、彼女の崇高な思いに、ただただ、敬意を表することしかできない自分がいた。

 田中先生も、東京での研修会では、管理職から一般教員まで、立場も専門も違う先生方が一堂に会して、次世代の子どもたちのことを真剣に考えている姿に驚き、自身も成長しなくてはと意欲喚起につながったと綴られている。

 彼女は東京都の教員、在外教育施設(中国日本人学校)の経験、そして特別支援学級の経験と、幅広く豊富な教員経験を持ち備えている。その上でテクノロジーに開花した彼女は、現在、マイクロソフト、インテル、グーグルが認める教育イノベーターとして全国区の実践者となった。先日、都内での研究会で信州大学の情報科学の教授が「長野県は、田中愛先生がリーダーシップを発揮されていますから」と、大学教授も太鼓判の活躍ぶりに脱帽であった。

「プログラミング教育をツールとして、子どもたちと一緒に学びの楽しさを味わっていけるよう、私も日々アップデートしていきたいと思っています」と、メールは結ばれていた。

 この一文に、まさに、生涯学び続ける彼女の姿が明確に映し出される。当然、そんな姿を日々見ている子どもたちは、自ずと学びの楽しさ実感するはずである。今や、プログラミング界隈では全国に名前が轟き、精力的に特別支援とのテクロジーの親和性も発信されている多忙な日々の田中先生。時折投稿される、彼女のお子様と楽しく過ごす様子のSNSに、幾ばくかの安堵を感じている。

 今回、プログラミング研修との出会いから、自身の教員生活に大きな変化が生じた二人を紹介した。4月から始まるプログラミング教育。第二の林先生、第三の田中先生が多くの自治体で登場されることを期待して、来年度の研修計画を立案していきたい。

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福田晴一

福田晴一

福田晴一(ふくだ・はるかず)/昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中

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