私は「そんなに熱く打ち込んで、家庭は大丈夫なの?」とちょっと意地悪な質問を投げかけてみたところ、「我が子とプログラミングを楽しんでいます。当時はまだ幼稚園児でしたが、ビスケットやスクラッチJrなどを一緒にやったり、歩きながらあれはどんなしくみなのかなと話したりするようになりました。今では自分でタブレットを操作して進められるようになっています」と、誇らし気にかつ優しい笑顔が垣間見られた。

 4月からは、いよいよ全面実施の小学校プログラミング教育。尼崎市を中心とする関西方面での彼の活躍を、今後も注視していきたい。

■田中愛先生「有意義な研修は私にとって最高の趣味」

 次に紹介するのは、長野県伊那市の女性、田中愛先生だ。流石に、彼女とは一献交わしての思い出話とはいかず、メールでのやりとりで話を聞いてみた。田中先生は、大学の私の後輩にあたり、専門分野はテクノロジーと真逆の心理学系、特別支援教育なので、パソコン操作も校務を扱うレベルだったという。そんな田中先生からの返信で注目されたのは、研修会参加の動機だ。

「プログラミング教育に関心が高かったわけではなく、3年前、情報教育の知識ゼロにも関わらず、校務分掌(学校内の業務分担)で情報教育担当に『なってしまった』ので、県主催ICT研修を受けたことがきっかけです。その研修でみんなのコードの代表、利根川さんと出会い、そこで受けた研修内容を学校で実践してみたら、『この教育は絶対だ』と実感し、私の何かに火がつき、養成塾入塾を決意しました。プログラミング教育を初めて子どもたちに実践した時、子どもたちの目の輝きや、学びに向かう姿の変容が衝撃的だったのを、今でもはっきりと覚えています。これですよ」

 前述の林先生同様、プログラミングとの出会いは情報担当という校務分掌がきっかけという。確かに「プロクラミングの授業をすると、子どもの目の輝きが違う」という声を多くの先生方から聞く。田中先生はこの衝撃から、東京で開催されている週末の研修会に長野県から高速バスを利用して参加されていた。時には早朝バスも利用していたと記憶していたので、多忙な中で、時間とお金を費やすことへの心境を尋ねてみた。

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