──自分なりの努力の方法はありますか?

 いや、もう……頑張る。ひたすら気合です(笑)。まあ、考えることをやめないということですね。

──演出家のショーン・ホームズさんとは初タッグですが、今回演出を受けてみていかがですか?

 今は台本に描かれてない部分やセリフの捉え方について、「自分はこう思う」ということを伝え、話し合って可能性を探ってる感じです。ショーンさんは、自分がまったく気にしてなかった部分を「どう思う?」と聞いてくるから怖いです。そういうときは、まだまだ役についての自分の考えは足りないんだと思いますね。

──そういうやり取りのなかで、役に対する解釈が変わったりもする?

 もちろん。演出家さんのなかには、稽古が始まる前に話し合う“答え合わせ”を嫌う人もいますから、ショーンさんのように、みんなの共通認識を持つことから始めるというのは新鮮ですね。もともと自分は、稽古中にスタッフや共演者の前でさらけ出すのが恥ずかしいタイプなので、自分の殻を破るためのチャレンジでもあります。それによってどう変わるかはまだわからないけど、すごい刺激を受けてます。

──コンスタントに舞台に立たれていますが、森田さんにとって舞台とはどういう場所でしょう。

 役と向き合う時間が長いし、非常に勉強になる場所ですね。特に今回はショーンさんと出会って、考え続けることの大切さを学びましたし、舞台でしかできない経験がある。でも根本にあるのは、人が好きってことなのかなぁ。今年、岩松了さんの舞台(「空ばかり見ていた」)をやったときにそんなことを感じました。

──今回も含めて一筋縄ではいかない役に取り組んでいる印象がありますが、敢えて挑戦的な役を選んでいる?

 いや、そんなこともないんですけど……。今回の舞台で「どっちに行くか直感は信じないと。進むべき道もそいつが教えてくれる」というセリフがあるんですけど、まさしくそれです。直感なんですよね。冷静に考えたら危険な役でも、直感的にやりたいと思ったら挑戦しますね。

──入り込みすぎて、日常生活も役に引きずられる、といったことはないですか。

 まったくないです。家に帰ったら自然とリラックスできます。比重としては演じている時間よりも、普段の自分の生活の方が重いはずですよね。でもそこが満たされてないと、役に引っ張られてしまうかもしれない。だからこそ些細なことをうれしく思ったり、幸せに感じる気持ちが必要な気がします。僕は10代の頃からいろんな刺激を受けながら走ってきた。だから、余計に日常生活における小さな幸せの大切さを思うのかもしれない。それに気づけたこと、そういう場があることは、とてもラッキーだったと思います。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2019年12月23日号-2020年1月6日合併号