三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)/1932年、青森市生まれ。85年、世界七大陸最高峰からのスキー滑降を達成。エベレストには70歳、75歳、80歳で3度登頂(撮影/写真部・掛祥葉子)
三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)/1932年、青森市生まれ。85年、世界七大陸最高峰からのスキー滑降を達成。エベレストには70歳、75歳、80歳で3度登頂(撮影/写真部・掛祥葉子)
男性更年期障害チェック表(AERA 2019年12月9日号より)
男性更年期障害チェック表(AERA 2019年12月9日号より)

 減少したテストステロンは、補うほかない。冒険家の三浦雄一郎さんは男性ホルモンであるテストステロンを補充することで、身体に劇的な変化があった。AERA 2019年12月9日号から。

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 プロスキーヤー・冒険家の三浦雄一郎さん(87)がテストステロンの効果を実感したのは、注射を始めて1カ月ほどたったころだった。

「60代、70代と“熟睡”状態だったのに高校生のような“朝立ち”が起きて、元気も湧いてきた。やっぱりうれしいものですよ」

 70歳、75歳で世界最高峰・エベレスト登頂に成功し、次は80歳でと意気込んでいた三浦さんだが、76歳のときにスキー場でジャンプに失敗し、左大腿(だいたい)骨頸部や骨盤など5カ所を骨折した。医師からは「治っても車いす生活」と言われる大けがだったが、3カ月の入院と長いリハビリを経て回復。しかし、体力・筋力は大幅に低下した。エベレストに登るには30代・40代のような筋力が必要なのに、これではとても間に合わない。

「先生の勧めで血液検査をしてみると、長い入院の影響か、テストステロンの値が70代の平均よりもさらに低いことがわかったんです。筋肉が付きやすくなり、やる気も上向くはずだと説明されて、78歳のときに治療を始めました」(三浦さん)

 2週間に1度の注射を続けると、冒頭のように「若返り」を実感し、筋力もアップした。80歳にして背筋力は130キロを記録。出発の2カ月ほど前には不整脈の手術をすることになり、多くの人から挑戦を翌年へ延期するよう進言されたが、モチベーションも落ちなかった。

 エベレストのベースキャンプでも、チームドクターにテストステロン注射を続けてもらい、2013年5月23日、三浦さんは世界最高齢80歳でのエベレスト登頂に成功した。

「エベレストに登頂できたのはいろいろなサポートがあったからですが、テストステロンが果たした役割もとても大きかったと思います」(三浦さん)

 次の目標は、「90歳でアフリカ最高峰・キリマンジャロに親子3代で登る」こと。現在はテストステロン注射を中断しているが、今月中にも再開する予定だという。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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