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KIRINJIのアルバム「cherish」は今の生活から見える景色を飄々と音で描く

連載「岡村詩野の音楽日和」

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KIRINJIのニュー・アルバム「cherish」(ユニバーサル・ミュージック提供)

KIRINJIのニュー・アルバム「cherish」(ユニバーサル・ミュージック提供)

_(c)Yosuke Suzuki(ユニバーサル・ミュージック提供)

_(c)Yosuke Suzuki(ユニバーサル・ミュージック提供)

 キャリア20年を超えてなお、というより、現在が第2の最盛期ではないか。KIRINJIのニュー・アルバム「cherish」を聴きながらそんな手応えを感じている。

 もともとKIRINJIは堀込高樹、泰行による兄弟ユニット「キリンジ」として1996年に結成された。海外では、ミクスチャー・ロックやオルタナティブ・ロックが商業的成功を収めていた90年代半ば。彼らはそうした風潮に背中を向けるように、丁寧なソングライティング、凝ったコード展開やアレンジ、良い音による収録、高い演奏力……といったいわば“高条件”を妥協せずに貫くかのような作品を送り出してきた。

 同世代同士でつるむことをせず、自分たちより知識も経験も豊富なプロデューサー・アレンジャーの冨田恵一と組み、質の高さに徹底的にこだわった。「若いから」「ポップだから」などという甘えを許さない姿勢で生み出された作品は、最初からその音楽性が高く評価された。そればかりか、折からの「はっぴいえんど」(大瀧詠一、細野晴臣、鈴木茂、松本隆による日本のロック・バンドの草分け)の再評価などで日本語で歌うことの醍醐味や素晴らしさが見直される中、若手の象徴的存在として注目を集めることとなった。

 だが、今の彼らはもっとグローバルな視点に立脚しているように思える。いわば、歴史の縦軸を徹底して掘り下げるだけでなく、横軸……つまりは同時代の音作りにまで枝葉を伸ばしていっているような。少なくとも、セルフ・プロデュースをおこなうようになり、さらに「キリンジ」ではなく現体制の「KIRINJI」になってからの彼らは、そうした横軸へのアプローチへと思い切って舵を切った印象さえある。

 2013年、代表曲である「エイリアンズ」(00年)など多くの曲を書いた弟の泰行が脱退。以降、兄である堀込高樹を中心とした新編成へとシフト・チェンジし、名義も「KIRINJI」と改め一気にメンバーも増えた。もっとも、堀込高樹、田村玄一、楠均、千ヶ崎学、弓木英梨乃という5人組となった今も、これまでの妥協なき音作りの姿勢は変わることがない。それどころか、曲によっては躊躇なくダンス・ミュージックやヒップホップのスタイルを取り入れるようになり、高樹もリーダーとして堂々とステージに立つようになっている。


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