東京電力の旧料金プランは2020年1月末で完全に終了する。手続きをしなければ「現在のお支払額に比べてご負担が大きくなる可能性があります」と書かれた封書が放置民の郵便受けに届いている(撮影/ 写真部・張溢文)
東京電力の旧料金プランは2020年1月末で完全に終了する。手続きをしなければ「現在のお支払額に比べてご負担が大きくなる可能性があります」と書かれた封書が放置民の郵便受けに届いている(撮影/ 写真部・張溢文)
個人向け販売量&シェア「東京ガスの電気」がダントツ(AERA 2019年11月11日号より)
個人向け販売量&シェア「東京ガスの電気」がダントツ(AERA 2019年11月11日号より)
新電力に切り替えた世帯はどれくらい?(AERA 2019年11月11日号より)
新電力に切り替えた世帯はどれくらい?(AERA 2019年11月11日号より)

 電力の自由化がスタートして3年半。今や1千社以上の新電力事業者が乱立する。ただ、実際に契約を切り替えた人は21%。今こそ一歩踏み出しませんか。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

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「ご契約中の電気料金プランは終了となります」。大きな赤い文字で書かれた封書を前に、都内の会社員女性(45)は語る。

「東京電力から何度も届いているんですけど、封を開けてもいなかったんです。先日は家まで東京電力の方が来たようだったので、いよいよ手続きしなきゃな、と。でも面倒……」

 昼間は仕事で家にいない女性が契約していたのは東京電力の“半日お得プラン”。「このプランにしたことすら忘れていた」(女性)というが、封書をよく読むと、“2020年1月末で旧契約が終了し、東京電力グループの新電力会社PinTの提供する同等料金のサービスに自動移行される”という最後通告のようなものだった。

「期日までに切り替えの手続きをしない場合、東京電力の他のプランに移行する、その場合は現在より支払額が大きくなる可能性もあると書かれていました。増税されたばかりですし、値上がりは嫌。慌ててネットで検索してみたんですけど、新電力会社って今何社あるんですか? 気が遠くなりました」(同)

 16年4月から鳴り物入りで始まった電力の小売り全面自由化から3年半が経過。異業種からの電力小売り参入数はすさまじい勢いで伸びた。10月30日現在、PPS(Power Producer and Supplier)と呼ばれる新電力会社は1116社ある。そのうち、資源エネルギー庁への登録が完了した電力小売業者だけでも619社だ。何をやっている会社なのかもわからない企業も散見される。乱立状態だ。

 そもそも電力自由化はなぜ始まったのか。電気とガスの比較サイト大手、エネチェンジ顧問の巻口守男さんに聞いた。

「1980年代に英国で始まった世界的な規制緩和の流れで、90年代後半には欧州や米国の一部の州で小売り全面自由化が進みました。日本でも、これまで大手電力会社が独占してきた市場にメスが入ったわけですが、先進国の中では遅すぎるくらいです。電力販売に新規業者が参入することで競争が生まれ、個人が自分の家に合った契約プランを、これまでより安い価格で選べる時代になった。賢く選べば、純粋な電気代だけで年間1万~1万5千円ぐらいは簡単に下がります」

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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