新規契約でギフトカード1万円分などをもれなくプレゼントしてくれる会社も多く、電力会社を切り替えるだけで初年度に3万円以上の得になるケースは全く珍しくない。

 新電力会社は、人件費や請求書の郵送費など固定費をカットし、電力の取引市場から電気を安く上手に調達するなどして料金の引き下げを競い合っている。最近の傾向は?

「電力の1年後に自由化されたガス料金とのセット売りが幅を利かせていますね。特に大手ガス会社系列の新電力小売会社が急速にシェアを伸ばしています。テレビCMやネット広告を見た人も多いのでは」(巻口さん)

 新電力のシェアは、首位が東京ガスの「ずっとも電気」、2位がKDDIの「auでんき」、3位が大阪ガスの「大阪ガスの電気」。

 イケイケドンドンの新電力会社に対し、個人の動きは鈍い。新電力に切り替えたのは全国で約1353万世帯と、全体の21.6%。全世帯の8割近くはその地域の大手電力会社と、これまで通りの契約を結んでいる状況だ。多数の新電力が参入する東京ですら、7割の世帯は大手の契約のままなのである。

 消費税増税もあり、大手電力会社とガス会社は11月から全社が一斉に料金を値上げする。今からでも遅くない。増税分を取り戻すべく、新電力への移行を進めたい。何百社もあるので、比較サイトを上手に使うことが“最安の正解”への近道だ。

 巻口さんが顧問を務める「エネチェンジ」では、サイトにアクセスした人の郵便番号から、その地域の気候に応じた電力消費傾向まで分析し、顧客に合った最も安い電力プランがある電力会社を紹介している。

「できれば10社、少なくとも5、6社のプランを見て、自分に合ったものを選びましょう」(同)

 巻口さんも触れたガス料金と電気料金のセット販売のほか、KDDIのauでんきやソフトバンク系列のSBパワーなど、携帯電話会社も通信料金割引とのセット販売で人気だ。

 試しに冒頭の女性の郵便番号で、「お昼時は誰もいない」「22時以降まで夜更かし」という検索をかけると、エルピオでんきというLPガス中堅のプランが出た。初年度の電気料金が3万4899円も節約できる。そのうちの1万3千円は新規加入したことでもらえるアマゾンのギフト券だが、電気料金だけでも年間約1万7千円は下がる。

「セット販売が人気と先ほど申し上げましたが、全般的に見て電気だけで一番安い、ガスだけで一番安いところをそれぞれ選ぶほうが、結果的にお得になると思います。今の世の中、情報を自分で取りにいって選ばないと損をしますよ」(同)

(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2019年11月11日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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