火の付いたようなかゆみの荒波が… 米国発「南京虫」被害が国内で急増中 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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火の付いたようなかゆみの荒波が… 米国発「南京虫」被害が国内で急増中

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井上有紀子AERA
南京虫についての相談件数」の推移(AERA 2019年11月11日号より)

南京虫についての相談件数」の推移(AERA 2019年11月11日号より)

南京虫(トコジラミ)は成虫で体長5~8ミリ。日本にはほかにネッタイトコジラミもおり、沖縄では9割を占め、それ以外では1割程度。毛の曲がり方が違うが、目視では判別できないという(写真:国立感染症研究所提供)

南京虫(トコジラミ)は成虫で体長5~8ミリ。日本にはほかにネッタイトコジラミもおり、沖縄では9割を占め、それ以外では1割程度。毛の曲がり方が違うが、目視では判別できないという(写真:国立感染症研究所提供)

 南京虫とも呼ばれるトコジラミの被害が今、急激に増えている。米国では社会問題となっているほどだ。南京虫の恐るべき生態とは。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

【南京虫(トコジラミ)の写真はこちら】

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 仕事中、指にフーフーと息を吹きかけ続けた。指先から腕にかけて、無数の丸い虫刺され。少しでも冷やそうとするのだが、「かいちゃだめと思っても、無理、かゆすぎます」。

 東京都足立区に住むウェブディレクターの女性(43)を襲ったのは、南京虫だ。正式名はトコジラミ。夜間に人やペットの血を吸う。成虫でも体長5~8ミリ。カメムシの仲間で、ベッドの骨組みや、ふすまと床の隙間などに潜伏する。6カ月~1年ほどの寿命で200~500個の卵を産む。7日程度で孵化(ふか)するなど繁殖力は強い。

 害虫駆除業者でつくる日本ペストコントロール協会によると、協会への相談件数は2009年度の130件から右肩上がりに増え、15年度には617件に。その後も高止まりしている。日本では戦後に大発生したが、1970年代に沈静化していた。だがその後、DNAの変異で殺虫剤に抵抗する能力を付けて“進化”。10年ほど前から再び被害が報告されるようになった。一般的な家庭用殺虫剤が効かず、「スーパー南京虫」とも呼ばれている。

 日本ではまだ大きな騒ぎにはなっていないが、アメリカではすでに社会問題化している。

 ニューヨークの国連本部やエンパイアステートビル、ニューヨーク・タイムズ本社など様々な場所で南京虫が発見され、映画館や有名ブランドの店舗が、駆除のために一時的に閉鎖されることもある。

 米とカナダのホテルなどの宿泊者が南京虫による被害や目撃情報を投稿するサイト「The Bedbug Registry」には、世界中に展開する複数の高級ホテルで「南京虫が出た」との情報が上がっている。刺された人が訴訟を起こす騒ぎにまでなった。

 一度発生すれば、業者が入らなければ根絶できない。日本ペストコントロール協会の技術委員、小松謙之さん(56)は言う。

「虫1匹、卵一つが残っていれば、再び被害が発生し繁殖する可能性がある。ゼロにしなければならない」

 駆除では、南京虫の潜みやすい家具の隙間から壁の裏まで、くまなくチェック。室内にあるすべての荷物を移動し、箱の中に入っている物を出す。引っ越しに近い労力が必要だ。雑誌などに挟まっていないか、特徴である黒いふんがないかも確認する。そのうえで、薬剤やスチーム、高温乾燥機、ドライアイスで虫や卵を駆除する。協会によると、根絶するまでの駆除回数は3回が多いという。


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