「堤防あると景観楽しめない」多摩川氾濫の背景に住民の反対も

2019/10/23 11:30

多摩川の氾濫で冠水した世田谷区の歯科医院。台風19号の豪雨により、東日本各地で河川の氾濫や堤防の決壊が同時多発的に起きた(写真:オカムラ歯科医院提供)
多摩川の氾濫で冠水した世田谷区の歯科医院。台風19号の豪雨により、東日本各地で河川の氾濫や堤防の決壊が同時多発的に起きた(写真:オカムラ歯科医院提供)
多摩川の水位変化(AERA 2019年10月28日号より)
多摩川の水位変化(AERA 2019年10月28日号より)

 甚大な被害をもたらした台風19号。東京都内では多摩川が氾濫し、周辺の住宅地で浸水被害が発生した。氾濫をなぜ起きてしまったのか、防ぐことはできなかったのか。AERA 2019年10月28日号に掲載された記事を紹介する。

【グラフを見る】台風直撃時の多摩川の水位変化はこちら

*  *  *
 しゃれたショップが並び、多摩川のほとりで緑も豊か。住みたい街ランキングの常連となった街、東京・二子玉川の一角に12日夜、突然濁流が流れ込んだ。

 台風19号が列島を直撃する中、多摩川の水面が刻々と上昇していく一部始終を、東急電鉄二子玉川駅(世田谷区)近くに架かる二子橋の下流約100メートルにある、国土交通省の水位計が捉えていた。

 いつもは2メートルほどの水位が上がり始めたのは、12日午前6時ごろ。午前8時には3メートルを超えた。午後2時には6.34メートルとなり、午後6時に8メートル、午後10時には9.15メートルとピークに達した。

 多摩川が氾濫したのは午後10時10分ごろと見られる。水は、二子橋の上流約100メートルにある兵庫島公園付近、堤防が未整備の約540メートルの区間から溢れ出た。

「堤防があれば助かったのですが……。どうすればいいのか」

 川沿いのマンションの地下1階にあり、室内が2メートル近く冠水したオカムラ歯科医院の女性スタッフは声を落とす。

 濁流は、2013年開業の同医院のガラス製の出入り口を突き破った。書類やカルテは水につかり、治療機器はすべて壊れた。被害額は4千~5千万円になるという。医院再開のメドは立っていない。

 多摩川を管理する国交省の京浜河川事務所によれば、氾濫した堤防未整備区間は、昭和の初めごろから堤防を整備する計画があったという。しかし、当時十数軒あった旅館や料亭が「堤防があると景観を楽しめない」などと反対し、堤防をつくることができなかった。その後も国は堤防整備計画を進めようと住民説明会などを度々行ってきたが、「景観を大切にしてほしい」といった声が根強く、住民との間で折り合いがつかなかったという。

1 2

あわせて読みたい

  • 台風19号、「支流の逆流」で被害拡大 バックウォーター現象に対策は?

    台風19号、「支流の逆流」で被害拡大 バックウォーター現象に対策は?

    AERA

    10/29

    今年も豪雨に警戒を! 「水害自治体ランキング」に見る発生地域の共通点

    今年も豪雨に警戒を! 「水害自治体ランキング」に見る発生地域の共通点

    週刊朝日

    6/13

  • 「ゲリラ豪雨ではダムは機能しない」 間違いだらけの水害対策

    「ゲリラ豪雨ではダムは機能しない」 間違いだらけの水害対策

    週刊朝日

    10/27

    長野県の千曲川は過去の水害被害47億円、埼玉県越谷市は78億円  【台風、豪雨が多い東日本の街ランキング 】

    長野県の千曲川は過去の水害被害47億円、埼玉県越谷市は78億円 【台風、豪雨が多い東日本の街ランキング 】

    週刊朝日

    10/14

  • 氾濫平野、暴れ川、線状降水帯…専門家が指摘する「過去最大級」の水害発生要因とは?

    氾濫平野、暴れ川、線状降水帯…専門家が指摘する「過去最大級」の水害発生要因とは?

    AERA

    7/14

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す