ミュージシャン・俳優 福山雅治 (c)2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク
ミュージシャン・俳優 福山雅治 (c)2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク

 映画「マチネの終わりに」は大人の男女のラブストーリーだ。福山雅治は、40代を迎え苦悩する天才クラシックギタリストを演じる。芸術家として、恋に落ちる男性として、どんな思いで演じたのか。AERA 2019年10月21日号から。

【画像】AERA表紙を飾った福山雅治さん

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 福山雅治が演じる天才クラシックギタリスト蒔野聡史は、年齢を重ね、自分の音楽性を見失い始めていた。そんな時、パリ在住のジャーナリスト小峰洋子(石田ゆり子)と出会う。東京、パリ、ニューヨークを股にかけ、美男美女が大人の恋を繰り広げる。等身大ばやりの日本映画にあって、珍しいほどクラシカルなラブストーリーだ。

 恋の重要なスパイスとして、福山は、天才演奏家としての蒔野の苦悩を深く濃く表現する。スパイスではなく、こちらがメインテーマかもしれない。

福山雅治(以下、福山):今回この映画の出演を機に、初めてクラシックギターに接して、改めて様々な発見がありました。普段アコースティックギターやエレキギターを弾いているから弾けて当たり前だろうと思われがちですが、クラシックギターの世界は再現芸術。今まで僕がやってきた作曲や即興とはそもそものアプローチが根本的に違う。「これはまずいことになった……」と思いましたね。譜面を完璧に再現することはできて当たり前で、そこから自分がどう解釈するのか?が問われる。一見、静かな演奏の中にも超絶技巧が満載で、1小節ごとにすさまじいことが起こっている。クラシックの完成された緻密な旋律に接すると、普段僕がやっているポップスの自由さが怖くなります。ポップスのライブは、多少間違えても瞬間芸術的解釈で、照明を浴び、花火を打ち上げるような……ある意味、対極にあるんだなと。

 クラシックギタリストの福田進一から手ほどきを受け、映画の主題曲「幸福の硬貨」を自ら演奏するまでになった。

福山:時間もかかるし、まだしっかり取り組めてはいませんが、一生の課題ともいえる、向き合えるジャンルでした。両方を行き来して、僕の音楽につなげていければいいなと考えています。

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