ちなみに、現在も学生1人が卒業するまでに出す赤字額は約200万円という。

「本来、大学はいかに教育研究に金を使って赤字を出しているかを自慢するくらいであるべきだ。その赤字を補うための資産運用がうちでは極めて重要になっている」(同)

 安定運用を目指す大学が多い中、ある大学関係者は「キリスト教系の大学は(リスクをとった)資産運用に寛容な傾向がある」と指摘する。

 カトリック教会イエズス会の教育理念を持つ上智大学も、資産運用には積極的に取り組んでいる。元日興アセットマネジメント社長の引間雅史理事(64)によれば、運用に回している資産は約480億円にのぼる。上智の直接利回りも1.42%と、今回取り上げた大学の中では高い。しかし、実際の運用資産に対する収益の過去5年間の平均はさらに高く、トップだった東京理科の3.13%も上回るという。

 資産構成については、金利が低い債券は60%程度と多くとっているものの、株が25%ほどとリスクをとった運用と言えるだろう。収入全体のうち資産運用の占める割合は「年度ごとの増減は当然あるが、このところ5~10%で推移している。私大の平均よりかなり高く、収入における学費の依存度は相対的に低くなる」(引間理事)という。

 上智は15年、国内の大学として初めて国連が推進する「責任投資原則」に署名した。ある企業が、環境、社会、企業統治といった課題を重視しているかどうかを見極めて投資を判断する手法だ。引間理事は言う。

「結果的に投資のリターンと社会的リターンの両方を手に入れることができると考えています」

(編集部・小田健司、上栗崇)

AERA 2019年10月21日号より抜粋