「エドはこれまであまり演技をした経験がなかったので、リハーサルが必要だった。ツアーがあった多忙な中にもかかわらず、時間をさいてプロの俳優と一緒にやるリハーサルに来てくれたんだ。逆にヒメーシュもエドの前で歌わなければならなかった。プロのシンガーの前で歌うのはどんな気持ちだったろうね。にもかかわらず、エドはヒメーシュの演奏をとてもほめていたよ。心の底からね」

 ビートルズファンにはストロベリー・フィールドをはじめリバプールのビートルズ名所が登場するシーンもあり嬉しい。後半予期せぬ人物が哲学的な教訓を提供したり……。とにかく、見る者を幸せな気持ちにさせてくれる映画なのだ。

◎「イエスタデイ」
「トレインスポッティング」のダニー・ボイルが、ビートルズをテーマに監督。10月11日(金)から全国公開

■もう1本おすすめDVD 「パイレーツ・ロック」

「ラブ・アクチュアリー」(2003年)で、監督デビューを飾ったリチャード・カーティスの監督作第2弾は、1960年代イギリスの海賊放送局がテーマだ。レディオ・キャロライン等初のロック専門ラジオ局の誕生の経緯から合法化問題などがインスピレーションの源となっている。

 信じられないような話だが、60年代半ばのイギリスではラジオでほとんどロックがかからなかった。違法ラジオ局がイギリス国外の海域に浮かんだ船から英ロックファンにむけて放送を開始するようになったのが66年。本作はこの年を背景に、名付け親のクエンティン(ビル・ナイ)が運営する海賊ラジオ局に乗り込む主人公の青年カール(トム・スターリッジ)の目を通し、英ロックの歴史の重要な1ページに目を向ける。

「イエスタデイ」に共通するユーモアや冗談、心温まる人間関係などが満載されたエンターテイニングな内容。ケネス・ブラナーやエマ・トンプソン、ジェマ・アータートンなどのイギリスの名優陣とコメディー界の新鋭が顔を合わせるキャスティングも絶妙だ。また亡きフィリップ・シーモア・ホフマンの貴重な演技も垣間見ることができる。

◎「パイレーツ・ロック」
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格1429円+税/DVD発売中

(ライター・高野裕子)

AERA 2019年10月14日号