誠品生活日本橋は「書籍」「文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の4ゾーンで構成。台湾料理「フージンツリー」、老舗茶荘「ワンダーチュアン」など日本初出店の店も(撮影/写真部・片山菜緒子)
誠品生活日本橋は「書籍」「文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の4ゾーンで構成。台湾料理「フージンツリー」、老舗茶荘「ワンダーチュアン」など日本初出店の店も(撮影/写真部・片山菜緒子)
姚仁喜(クリス・ヤオ)氏。東海大学(台湾)を経てカリフォルニア大学バークレー校で修士号。代表作に「蘭陽博物館(台湾)」「烏鎮劇院(中国)」など(撮影/植田真紗美)
姚仁喜(クリス・ヤオ)氏。東海大学(台湾)を経てカリフォルニア大学バークレー校で修士号。代表作に「蘭陽博物館(台湾)」「烏鎮劇院(中国)」など(撮影/植田真紗美)

 世界から注目される台湾の書店「誠品」。東京・日本橋に進出した1号店には、「のれん」があしらわれている。来日した建築家に、デザインに込めた思いを聞いた。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。

【写真】日本初の店舗をデザインした姚仁喜氏

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「眠らない本屋」「世界で最もクールな書店」として、地元台北だけでなく、世界中からファンを集める台湾の「誠品」。9月27日、三井不動産が東京・日本橋に建てた商業ビル「COREDO室町テラス」に「誠品生活日本橋」をオープンし、ついに日本進出を果たした。

 創業者の故・呉清友(ロバート・ウー)氏は「場所の精神性」をテーマに、1989年から台北で「誠品」の店舗を次々と展開。人文書籍の充実、アートの展示、ライフスタイル用品の売り場併設など、独自のアイデアに満ちた店は、「台湾社会における重大な文化的事件」と言われ、その後、世界中で書店のビジネスモデルが刷新されるきっかけとなった。ただし、誠品を参考にしたと巷で言われる「代官山T−SITE」(2011年開業)は、「その事実はない」と運営元のカルチュア・コンビニエンス・クラブが否定している。

 誠品躍進の時代は中国国民党による約40年にわたった戒厳令が解除され、経済発展とともに中流層が力を持ち、言論、出版の自由が格段に高まった台湾の上昇期。ルネサンス的な機運の中で、同店が催した夜通しのイベントでは、午前4時に本屋に入るための行列ができたなど、数々の伝説を作り上げてきた。

 その誠品とともに、国際的な認知度を高めたのが、台湾発の建築やデザインだ。ウー氏自身、誠品の店舗で台湾を代表する建築家を積極的に起用してきた。今回、日本初の店舗をデザインした姚仁喜(クリス・ヤオ)氏はその一人だ。

 70年代に台湾とアメリカで建築を学んだヤオ氏は、台北の「誠品敦南店」、中国1号店となる「誠品生活蘇州」(江蘇省)を手がけており、誠品と組むのは今回で3店目。24時間営業の旗艦店である敦南店では、重厚なライブラリーで時の重なりを演出し、蘇州ではアプローチに巨大な階段を設け、日常とは違う時空間への旅を意識する。

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