便乗値上げはせず、店が損をすることもないよう微妙な調整をした結果だろう。

 増税を機にメニュー表の表示価格を税込みから税抜きの本体価格に改め、店内飲食か持ち帰りかに応じて消費税を上乗せするパターンが多い。これだと注文の時点で支払額が分からないのが難点だ。その点、ドトールコーヒーショップは本体価格に加えて、店内と持ち帰りそれぞれの価格を表示している。

「店内が満席で持ち帰るつもりだったけど、消費税8%で会計を終えたらちょうど席が空いたので、店内で飲んでいく」

 こんな場合に2%分の消費税を追加して支払う必要があるのか。チェーン各社に電話取材を試みたが、軒並み「軽減税率がスタートしてお客様の反応を見ながら対応を決めていくので、現時点では何も答えられない、誌面への掲載もお断り」という回答ばかりだった。

Q3:ごまかすとどうなる
レジでウソをついたら罪になるのか

 店内で食べると「外食」として10%の消費税率が適用される。しかしレジで「持ち帰ります」と言って会計後に店内で食べれば、支払う消費税は結果的に8%。これは罪になるのか。

 原・井上法律事務所(東京都中央区)の藤川祐士弁護士は「刑法246条の詐欺罪が成立する可能性があります」と指摘する。その場で食べる意思がありながら、持ち帰るというウソをついて消費税を8%しか払わなければ、店を被害者とする詐欺に該当するというのだ。

 藤川弁護士は「渡した品物を客が店内で食べると、店は10%の消費税を受け取って国に支払う義務を負います。しかし、このケースでは客が店をだまして8%分の消費税だけを渡し、品物を受け取っているので詐欺になるわけです」と説明する。

 千円の買い物だと、この“持ち帰ります詐欺”による店の被害は20円。少額だが、駅構内のコンセントから無断で携帯電話を充電し、3銭分の電気を盗んだとして窃盗容疑で摘発された事例もあるという。

 節約のつもりで言った軽いウソが犯罪に……。(経済ジャーナリスト・大場宏明、編集部・中島晶子)

AERA 2019年10月7日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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