日本ヒューマンセレモニー専門学校/納棺実習で、故人役の生徒を囲む葬儀会社の担当者役、遺族役の生徒たち。納棺は、遺族が故人とゆっくりと過ごせる数少ない時間であり、和やかな雰囲気作りが大切だという(撮影/写真部・小黒冴夏)
日本ヒューマンセレモニー専門学校/納棺実習で、故人役の生徒を囲む葬儀会社の担当者役、遺族役の生徒たち。納棺は、遺族が故人とゆっくりと過ごせる数少ない時間であり、和やかな雰囲気作りが大切だという(撮影/写真部・小黒冴夏)
社会人が学べるニッチ職に強い専門学校・養成所(AERA 2019年9月30日号より)
社会人が学べるニッチ職に強い専門学校・養成所(AERA 2019年9月30日号より)

 社会人を積極的に受け入れる専門学校が増えている。社会人の学び直しへの高い意欲もあるが、それだけではない。AERA 2019年9月30日号に掲載された記事を紹介する。

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 頭に三角の白い布を付け、布団に横たわる青年を男女が囲む。胸元に白い小袋を置く。

「こちらは六文銭になります。故人様の三途の川の渡し賃です」

 日本ヒューマンセレモニー専門学校(神奈川県平塚市)で、葬儀の運営や作法などを学ぶ「フューネラルディレクターコース」の納棺実習のひとコマだ。

 1年の東山光来(みつき)さん(21)は現在は葬儀を取り仕切る技術、遺族の精神ケア、宗教知識などの葬送儀礼を学んでいる。10月にこの実習を受けるのを楽しみにしているという。

「故人が生きているかのようにご遺族に語りかけることで、温かな空気を出せると学びました。実習で試してみたいです」

 東山さんは高校卒業後、名古屋市の冠婚葬祭会場で派遣社員として働いていた。そのとき、70代で亡くなった女性の三回忌の会場に派遣され、会場の和やかな雰囲気に驚いたという。

「葬儀や法事に行ったことがなく、『暗くて厳粛なもの』と思い込んでいました。でも会場では大人たちが近況を語り合い、小さな子どもの笑い声が響いていた。死を前向きに受け入れているんだと思い、そのお手伝いをする仕事がしたいと思いました」

 同校の校務主任の米山誠一さん(44)はこう語る。

「家族葬や直葬が増え、親戚づきあいも減るなかで、ご葬儀に出たことのない生徒も多い。葬祭が身近でないだけに、葬祭を取り仕切るディレクターに憧れを抱くようです」

 同コース十数人の生徒のうち、毎年2、3人は社会人がいる。異業種からの転職組もいれば、関連業種で働き、改めて基礎を学びたくなる人もいるという。

「葬儀会社に就職してしまうと、日々の業務に忙殺され所作の意味を学ぶ余裕はありません。実務だけでなく、その背景にある意味や理論を知ることで心を込めやすくなり、ご遺族に伝わるご葬儀ができるディレクターになれると思います」(米山さん)

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