オダギリジョー渾身の「理想の映画」 きっかけは健康診断の「よくない」結果

2019/09/21 11:30

 実際、口数の少ないトイチだが存在自体が“雄弁”だ。緑深い山奥で、大雨でも太陽がギラつく日でも黙々と舟を漕ぐ姿に耳を澄ませたくなる。

 本作を撮って良かったことを尋ねると、「やらなければよかったと思うことは一つもない」と即答。

「今回はクリスや衣装のワダエミさん、音楽のティグラン・ハマシアンという世界で活躍するスタッフや、お忙しい俳優陣の方々が集まって力を貸してくださった。本当にありがたかったです。生意気ながら、これは、自分にしか不可能な『組』であり『作品』なんだという思いがあります。それがこの映画を撮って一番良かったと思えるところです」

 オダギリ監督が考え抜いて作り上げた「理想の映画」。だが鑑賞の際は、絵のサイズといい音の付け方といい、「映画館で見ないとこの映画の良さは絶対に伝わらない」(オダギリ監督)ので、くれぐれもご注意を!

◎「ある船頭の話」
主演に柄本明を据え「本当に人間らしい生き方」を問う。全国公開中

■もう1本おすすめDVD 「宵闇真珠」

 俳優オダギリジョーがメガホンを取るきっかけとなった本作。ジェニー・シュンと共同監督を務めたクリストファー・ドイルが撮影も担当。

 舞台は時代に取り残されたような香港最後の漁村。幼少時から日光に当たるとやせ細って死んでしまう病気だと言い聞かされてきた16歳の少女(アンジェラ・ユン)は、周囲から孤立していた。彼女にとっての慰めは日没後に肌を露出し、お気に入りの場所で、お気に入りのカセットテープで音楽を聴くこと。そんな彼女がある日、どこからともなく村にやってきて丘の上に住み着いた異邦人(オダギリジョー)に出会う……。

 ウォン・カーウァイ監督作品をはじめ、1990年代香港映画ブームに一役買ったドイル。斬新な色彩やハンドカメラを使った自由奔放な映像で観る人を魅了してきた。「ある船頭の話」では土地の美しさに加え、四季折々の微妙な変化をとらえた映像に、改めて自然が息づく日本の美を発見させてもらったが、本作では時代の変化を切り取りながらも、異なるアプローチで移りゆく香港を見せる。花緑青のような色味のせいなのか、幻想的な映像にはどこか物悲しい懐かしさが漂っている。

◎「宵闇真珠」
発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:ポニーキャニオン
価格3800円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・坂口さゆり)

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