野口健(のぐち・けん)/アルピニスト。25歳のとき、当時史上最年少で世界7大陸最高峰登頂に成功した。災害支援、環境保護活動など多方面で活躍する(野口さん提供)
野口健(のぐち・けん)/アルピニスト。25歳のとき、当時史上最年少で世界7大陸最高峰登頂に成功した。災害支援、環境保護活動など多方面で活躍する(野口さん提供)
熊本地震のときにつくった避難者用のテント。くつろげる空間づくりを心掛けた(野口さん提供)
熊本地震のときにつくった避難者用のテント。くつろげる空間づくりを心掛けた(野口さん提供)

 災害時にパニックにならず、立ち向かう力をどう身につけたらいいのか。アルピニストの野口健さんに聞いた。

【災害にすぐ取り組める「備災力」をつける110のタスク表はこちら】

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 東日本大震災、地震、西日本豪雨など各地の災害現場に足を運び、支援活動に従事しました。そのなかで感じるのは、発災後3日、長くても1週間を生き抜ければ、この国では何とかなるということ。逆に言うと、その期間を自力で生き延びる術を身につけなければいけません。でも、災害はいつか起こると言われてもなかなかピンとこないし、ネガティブなことを考え続けるのはしんどい。だから僕は、「楽しんでやっていたことが、自然と災害対策になっていた」のがベストだと思います。

 一番いいのがアウトドア体験です。テントなどのアウトドア用具を使いこなせれば災害後の避難生活が楽になる。熊本地震のとき、僕は仲間とともに避難者用のテント村をつくりました。当初は避難所に入れない人のための施設だったけれど、避難所から移ってくる人もいて、最終的には600人を超える大所帯になりました。意識したのは、リラックスできる空間です。これまでのアウトドア体験、とりわけ、エベレストのベースキャンプづくりで培ったノウハウを生かすことができました。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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