クライマックスではスクリーンに、波を描いた葛飾北斎の作品が映され、ピンク・フロイドの「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」を足踏みや歌唱も交えて熱演した(撮影/写真部・掛祥葉子)
クライマックスではスクリーンに、波を描いた葛飾北斎の作品が映され、ピンク・フロイドの「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」を足踏みや歌唱も交えて熱演した(撮影/写真部・掛祥葉子)
メロッツィ(右)はカラフルなチェロをギターのように抱えて弾くこともあった。ソッリマ(左)は来年5月にソロ公演で再び来日。2度目の「100チェロ」も検討中だ(撮影/写真部・掛祥葉子)
メロッツィ(右)はカラフルなチェロをギターのように抱えて弾くこともあった。ソッリマ(左)は来年5月にソロ公演で再び来日。2度目の「100チェロ」も検討中だ(撮影/写真部・掛祥葉子)

 100人を超すチェリストたちが深みのある音色を朗々と響かせる。舞台は、まるで「チェロの森」だ。となる「100チェロ」の公演を聴き、主宰する世界的チェリストに思いを尋ねた。

【写真】ジャンルを超えた演奏で知られる世界的チェリストのジョバンニ・ソッリマら

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 猛暑の8月12日、東京都内のすみだトリフォニーホールに129人のチェロ奏者が勢ぞろいした。ジャンルを超えた演奏で知られる世界的チェリストのジョバンニ・ソッリマ(56)らイタリアからの6人と、公募による123人が日本初演の「ソッリマと100人のチェリストたち」に集結。ヘンデル作曲「サラバンダ」の厳かな調べで開演した。

 ソッリマが1679年製の愛器ルジェーリを抱えて客席通路に現れ、舞台へと弾き歩く。やがてディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」などロックや交響曲のメドレーに転じると、重低音のパワフルな響きに。プロ・アマ、国籍を超えた老若男女による多彩な音色が会場を包み込んだ。

 この「100チェロコンサート」の発端は2012年。ローマの18世紀建築・ヴァッレ劇場が財政難で閉鎖されることに多くのアーティストが反対し、劇場を占拠してパフォーマンスを続けるなか、ソッリマと盟友のチェリスト、エンリコ・メロッツィ(42)が始めた。その後も14年の「ベルリンの壁崩壊25周年記念コンサート」をはじめ、欧州各地で開かれ反響を呼んでいる。

「最初の抗議演奏後、子どもたちやアマチュア育成の機会もあって学ぶことが多かったので、社会的パフォーマンスだけでなく、お返しをしたい思いで続けているんだ」(ソッリマ)

 昨年ソロ公演の打診を受けたが、「100チェロを東京でも」と自ら希望し実現した。

 共に作編曲家で指揮もするソッリマとメロッツィは、曲に応じてボディーを叩くなど数多の奏法で観客を魅了した。

「チェロを100%使いたいんだ。パーカッション的に叩くのは、18世紀のボッケリーニもしていた。抱えたり、歩きながらの演奏も新しいことじゃないよ」

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