サンマのお寿司もやがて高級品になるかも(写真/筆者提供)
サンマのお寿司もやがて高級品になるかも(写真/筆者提供)
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 暑さも少し緩んできて、少しずつ秋の気配を感じられるようになってきました。秋を代表する魚といえば、なんといってもサンマですよね。俳句の世界では、秋の季語にもなっています。

【秋の恵みのはずが不漁が続くサンマ】

 値段も手頃で脂の乗ったサンマは、江戸時代中期から庶民の強~い味方でした。余談ですが、江戸時代中期までは、サンマは食用ではなく行灯(あんどん)の油をとるためだけに使われていたとのことです。当時はあっさりとした魚が人気で、脂の乗った魚は下品と考えられていたそうです。サンマの脂で行灯をともしていたとは、それだけ脂がよく乗っていたということですよね。

 そんなサンマに近年異変が起きているんです。サンマは2015年から不漁が続いており、シーズンが始まったばかりの今年も序盤から不漁で、昨年に比べて2倍もの値段になっている市場もあるとのことです。

 日本でも有数の水揚げを誇る大船渡市では、毎年8月末のお祭りで初物のサンマを振る舞ってましたが、今年は十分な量のサンマが確保できず、やむなく去年の冷凍サンマで代替したそうです。

 サンマは、北太平洋を広く回遊する回遊魚です。日本列島の南方沖で孵化したサンマは、黒潮に乗って北上します。北海道のはるか東方沖の北太平洋でたくさん餌を食べ、丸々と太って脂をしっかりと蓄えたサンマたちが、夏の終わりから秋にかけて今度は親潮に乗って日本近海を南下していきます。その一番脂が乗ったおいしいサンマが北海道沖や三陸沖などで捕獲され、我々の食卓にのぼっているんです。

 この秋に南下するサンマの群れが、最近は日本列島から離れた海域を南下しているのが不漁の原因ではと言われています。温暖化によって日本近海の水温が上昇したことが関係しているとの指摘もありますが、正確な原因はわかっていないようです。

 そしてもうひとつ、日本以外の漁船による捕獲が近年急増していることも、日本の漁獲量が減っている一因と言われています。

 先程も書いた通り、日本の漁船は、北海道のはるか東方沖の北太平洋で育ったサンマが、親潮にのって日本近海に来たところを捕獲しています。一方、中国や台湾、韓国の漁船は、サンマの群れが日本近海に近づく前に、公海上で先取りしています。実は現在、北太平洋エリアで一番多くのサンマを獲っているのは台湾なんです。

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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日本の漁船が台湾船に太刀打ちできない理由は