新海誠(しんかい・まこと)/1973年、長野県生まれ。2016年、映画「君の名は。」が大ヒットを記録。映画「天気の子」が全国東宝系で公開中(撮影/写真部・片山菜緒子)
新海誠(しんかい・まこと)/1973年、長野県生まれ。2016年、映画「君の名は。」が大ヒットを記録。映画「天気の子」が全国東宝系で公開中(撮影/写真部・片山菜緒子)

 前作「君の名は。」で一部から批判も浴びた新海誠監督。それでも自分を貫きながら、時代や空気を敏感に拾い、新たな作品「天気の子」を生み出した。注目の集まる新海監督が、自身の心境の変化や作品への想いを語った。

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「君の名は。」の次の作品だからといって、プレッシャーは特にありませんでした。今回も楽しんでもらえる作品ができたと思います。

 ただ正直、不安もあります。というのは「君の名は。」では批判もたくさんいただいたんですが、「災害をなかったことにする映画だ」という意見もありました。僕はそんなつもりはなく、ただ「彼女を死なせたくない」という願いや祈りの結晶のような映画を作りたかった。でもそのことで傷つく人もいるのか、と気づかされました。

 そうした反応は怖くもありますが、実は一番聞きたかった声かもしれないとも思うんです。誰かを怒らせてしまうということは、そこになにか人の心を動かすものがあったということ。僕に作家性みたいなものがあるとしたら、そこなのかなと思うんです。だから「次は批判されない映画を」ではなく「もっと批判される映画にしたい」と思って作りましたし、それが創作の原動力になってもいます。

「君の名は。」以前といまとで、世の中の成り立ちがまったく違ってしまったと感じています。やはりSNSが大きいですよね。社会の透明度が異常に高くなり、炎上や批判で常に誰かが犠牲になって消費される。こんなに息苦しい世界でいまの若者は暮らしているのか、と思います。そんな窮屈さを一足飛びに越えてしまうような、少年少女を描きたかったんです。

 うちの娘はまだ小学生なのでSNSにそれほど関わっていないのですが、思春期になったらわかりませんよね。あ、娘はいまはYouTubeで米津玄師ばっかり観ています(笑)。

 僕自身が年齢を重ねたことでの変化もありました。アニメーションを作り始めた20代後半から30代のころは、自分に近い人たちに向けて作品を作っていました。でも、それが変わってきた。より真剣にエンターテインメントを必要としている人たち、若い世代に届けたいという思いが強くなったんです。

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