「古い家電をいったん捨てて、リフォーム後自宅に戻るときに新品を配送してもらいます。冷蔵庫や洗濯機などのリサイクル家電は、通常の買い替えなら配送時に古いものを格安で引き取ってくれるんですけどね。廃品回収業者に問い合わせると、軽トラック積み放題で3万円。3万円といわれて“安い”と感じるあたり、出費が多すぎて金銭感覚が狂ってるなと」(同)

 こういった予期せぬ出費だけで118万円。家具やカーテン、台所用品など、壁紙や床が新しくなると結局買い替えたくなるので、「ここからはチマチマしたお金がどんどん出ていきそうです」(同)と苦笑する。

 リフォーム費用は大手、中小交えて6社から見積もりを取った。台所、風呂、トイレ、洗面所、全部屋のフローリングと壁紙・天井の張り替え、床暖房取り換えで間取り変更は無しだ。全く同じ工事で見積もってもらったら、大手は料金が800万円~で工期は3カ月。中小は300万円~、1カ月。カネも時間も3倍近くの差があることに驚く。なぜここまで違うのか。

 まずは小規模リフォーム会社の話を聞いてみよう。30代で大手電機メーカーから独立して今年で30年、会社組織にしてから10年。東京都杉並区を中心にリフォームを請け負ってきたアイネックス社長の小池信之さん(61)は語る。

「一番大きな違いは人件費でしょう。うちに限らず小規模のリフォーム会社は社員数10人以下。現場はお客さまの工事内容によって左官屋、電気工事屋、水道工事屋などがフレキシブルに集まる方式です。大手は工事業者が施工する際、工程ごとに細かい品質チェックを行いますが、小規模の場合は監督担当者が常に現場にいますから、わざわざ別でチェック期間を設ける必要もない。関わる人数や工期が大手と中小で約3倍違うと聞いても『なるほど』と思います」

 工期の長さは、仮住まいや家具を預けるトランクルームの料金に関わるので無視できない。

「小規模会社だと品質を心配されるかもしれませんが、地域密着でリフォームをしていたら、下手なことはできないんです。近隣の評判がすべてですから、万が一お客さまが気に入らない点があれば納得するまで直しますし、それをしないと信頼されない」(小池さん)

 実際、アイネックスが請け負うリフォーム工事の大半はお客さんからお客さんへの紹介によるもの。確かに“下手なこと”をしたら悪評につながってしまう。ここであえて小池さんに、大手の良さを聞いてみた。

「大手は何があっても絶対に逃げない点が長所でしょうか。家というのは何十年の付き合いですから、担当者は代わっても会社が必ず存在し続けているのはよいことです。また、大手ブランド施工という安心感を求める方もいらっしゃるでしょう」

(ライター・伊藤忍)

AERA 2019年8月26日号より抜粋