赤、白、ロゼだけではない。新たな色味の名前を冠したワインが話題になっているという。ブームの背景に迫った。
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5月の平日、東京・築地の場外市場。会社員の小川由美子さん(43)は鮮魚店で買ったマグロの刺し身を持って、ワインの立ち飲み店「酒美土場(シュビドゥバ)」を訪れた。刺し身に合わせたのは、スペイン産のオレンジワイン「Baco Perez(バコペレス)」。「ブドウの皮の成分がよく出ていて、マグロとの相性も最高です」
満足げにグラスを傾けた。
2016年に開店した酒美土場では、オレンジワインを約50種類そろえている。
店主の岩井穂純さん(41)がオレンジワインと出合ったのは、10年ほど前、旅先のオーストリアでのこと。ナチュラルワインの生産者を訪ねた際、たまたま飲ませてもらった。力強く渋みがある独特の風味、とはじめは感じた。飲み続けると徐々にしっくりくるようになり、気づけば好きになっていた。
開店当初は、「お客さんの95%は存在すら知らなかった」というが、最近、徐々に認知度が上がってきた。
「みそや漬物など発酵食品を中心に、和食との相性が抜群にいい。まだまだ人気は広がるのでは。イタリアやオーストラリア、日本など世界中に産地がありますし、つくり手もどんどん増えています」(岩井さん)
赤や白やロゼでもなく、オレンジワインとはいったい何か。確かにオレンジ色をしているが、果物のオレンジからつくるワインかと思えば、そうではない。赤ワインや白ワインと同様、ブドウからつくる。
伝統的な産地は、約8千年前からワインがつくられていると言われるジョージア。琥珀色に見えることから、現地では「アンバー(琥珀色)ワイン」とも呼ばれる。
酒類専門店・山仁(栃木県宇都宮市)社長で、ワインの世界で最高峰とされる「マスター・オブ・ワイン(MW)」の称号を、日本在住の日本人で初めて獲得した大橋健一さん(52)は、こう説明する。