直木賞候補になった柚木麻子さんの新作『マジカルグランマ』は、主人公の高齢女性が「日本のおばあちゃん像」を打ち壊す痛快なストーリー。同作をテーマにした上野千鶴子さんとの対談が、紀伊國屋書店新宿店で実現した。
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上野千鶴子(以下、上野):この小説、映画になりますよ。吉行和子さんに演じてもらいたい。
柚木麻子(以下、柚木):私もそう思っていました! 吉行さんが「日本のおばあちゃん像にはうんざりだ!」とおっしゃっているインタビューを見て、キレッキレだ! って(笑)。
上野:「マジカル女性作家」っていうのもあるんですって?
柚木:デビューしたころ、女性作家と温泉で女子会をしていたんです。それが男性編集者にバレてしまって、そのとき言われたんです。「女性作家というものはつらい恋愛をして、孤独を噛みしめて、その中から作品を生んで読者に差し出すような気持ちじゃなきゃダメだ」って。
上野:それが男性編集者が求める「女性作家像」なんですね。
柚木:一応「はい」ってうなずいたんですけど、でもよく考えたらそんな女性作家なんているか? って。女子会はこっそりやろうと思いました。
上野:女子会、楽しいわよね。楽しすぎて、男いらずになっちゃうのよ、これが(笑)。
柚木:本当ですよね。でも私たちの世代ってもともと恋愛に重きがない。恋愛小説を書く方もいますけど、いっぷう変わった視点で書かれることが多い。
上野:いまの若い世代は、恋愛も結婚も「女の必須アイテム」ではなくなっています。
柚木:そう思います。この本は「文学で#MeTooをやりたい!」と公言しているんですが、#MeToo運動が起こって、社会の状況はだいぶ変わったと思うんです。
上野:本当に。つくづく思ったのは、これまで上の世代の女が「自分たちは我慢してきたんだから、あなたたちも我慢しなさい」と言ってきたということ。でも#MeTooを経て、「自分たちが我慢してきてごめんなさい」って謝ったでしょう。これは大きな変化でしたね。変化は若い世代からだけ起きるんじゃない、上の世代も変わるんだなと思いました。