米下院金融サービス委員会委員長のマキシン・ウォータース下院議員(民主)は「問題の多い同社の過去に照らし、米議会や規制当局が課題を検証する機会を得るまでは、仮想通貨の計画を一時停止することに同意するようFBに要請する」と冷や水を浴びせた。

 FBが2016年の米大統領選の際、最大8700万人分の個人情報をイギリス選挙コンサル会社に流出させるなど、同社を巡っては大規模なプライバシーの侵害問題が相次いでいるからだ。

 米議員たちのこうした強い懸念を背景に7月半ばには、米議会でリブラについての公聴会が開かれる予定だ。

 米メディアの反応も厳しい。フォーブス誌は「FBが関わってさえいなければ、リブラは面白いアイデアなのだが」という専門家の寄稿を掲載。ニューヨーク・タイムズ紙も「FBの通貨をあなたは信頼しますか?」という記事を載せた。

 米国内の反応で共通するのは、すでに世界的な影響力が大きすぎるとみられている、グーグル、アマゾン、FB、アップルの「GAFA」の力が、海外や国内送金などの金融の中核にまで侵食することへの警戒感だ。米巨大ITの力がさらに強まれば、ますますコントロールできなくなっていくだけに、その危機感は強い。

 GAFAに対する米国内の見方は厳しい。グーグルやFBは、高機能のサービスを無料で提供するのと引き換えに、利用者の個人情報を取得し、それをターゲティング広告に利用するビジネスモデルで、その根本的な仕組み自体を問題視する声が高まっている。人々のプライバシーを犠牲にして儲けている──という批判だ。

 だからこそ両社は最近、プライバシーに配慮する考えを繰り返し表明している。アップルは、グーグルやFBとは一線を画し、アップルの製品なら「プライバシー保護が万全だ」というメッセージを強くアピールし始め、米巨大IT同士のせめぎ合いも激しさを増している。

 アマゾンに対しては、さまざまな分野のビジネスを根こそぎとりにいく、貪欲な拡大路線への警戒感が強まっている。ネット小売りに飽き足らず米高級スーパー「ホールフーズ」の買収を通じてリアルな小売りにも進出したり、独自配送網を広げて配達事業にも踏み出したりする姿勢への反発だ。

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