世界に衝撃を与えた、フェイスブックによる仮想通貨「リブラ」の公表。GAFAの勢力図を変える可能性のあるインパクトだ (c)朝日新聞社
世界に衝撃を与えた、フェイスブックによる仮想通貨「リブラ」の公表。GAFAの勢力図を変える可能性のあるインパクトだ (c)朝日新聞社
フェイスブックで「リブラ」の事業を率いるデビッド・マーカス。オンライン決済「ペイパル」の元社長という経験が生きる(写真:gettyimages)
フェイスブックで「リブラ」の事業を率いるデビッド・マーカス。オンライン決済「ペイパル」の元社長という経験が生きる(写真:gettyimages)

 フェイスブックが6月、仮想通貨(暗号資産)「リブラ」を発表した。お金の流れが変わるだけでなく、GAFAのさらなる巨大化も懸念される。G20でも話し合われたデジタル経済から目が離せない。

【写真】フェイスブックで「リブラ」の事業を率いるデビッド・マーカス

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「ビットコインは投資対象ではあるが、すばらしい通貨ではなかった。リブラは高品質のデジタル通貨だ」

 フェイスブック(FB)でリブラの事業を率いるデビッド・マーカスは、18日に公表した「リブラ」への強い期待感を、筆者に率直に語った。

 マーカスは、「ペイパル」の元社長で、オンライン決済を知り尽くした人物だ。

 インタビューの場所は、サンフランシスコにある歴史的な建造物「オールド・ミント」。19世紀から通貨をmint(ミント=「鋳造」の意)していた由緒ある建物だ。コインを生み出していた場所であり、仮想通貨の「鋳造」に向けた意気込みは、細部にまで宿っていた。

「1社がコントロールするべきものではないと最初から考えていた。我々は28社で、この新たな取り組みを始める」

 とマーカスは話し始めた。

 仮想通貨開発はもともとFBが進めてきたが、世界標準化に向けて他社に広く呼びかけたほうが効果的と判断。独立した発行団体をつくり、そこにFBも子会社「カリブラ」を通じてメンバーの一社として参加する形をとるのだ。

 具体的には、28社の共同でスイスのジュネーブに「リブラ協会」を設立。その協会が、ブロックチェーンの技術を使った通貨「リブラ」を来年発行し始める。来年の上半期と見込むサービス開始時には、参加企業を100社以上にしたい考えだ。参加には、1社最低1千万ドル(約10億8千万円)の出資が必要で、サービス開始時には団体の出資金が数十億ドル規模になると見込まれている。

 現時点では日本企業は参加していないが、マーカスは「サービスを始めるころには日本のメンバーも一員になっていることを期待している」と話す。仮想通貨発行にあたっては、米国や欧州など各国の当局の許可を得ることが必要だ。米欧だけでなく、すでに日本の当局とも話し合いを始めているといい、周到に事を運んでいることがうかがえる。

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