リブラの価値が、他の仮想通貨のように乱高下しなくなれば、実際に「通貨」としてやりとりされることを期待できるようになる。

 FBらが、その使い方として想定しているのは、スマートフォン上での利用だ。「リブラ」を使って、海外や国内への送金を簡単に行ったり、ネット上の買い物をしたりすることが見込まれている。

 ただ、そもそもリブラをどうやって購入したらよいのか。FB幹部が私に語ったのは、コンビニエンスストアで、現金をリブラにしたり、リブラを現金に戻したりする利用方法だ。
 例えば、コンビニのレジで現金を渡してリブラの購入を頼むと、スマホのアプリ上に購入したリブラが現れる。逆に、現金に戻したいときには、スマホで現金に換えるように操作し、実際のお金をコンビニのレジで受け取る──といったイメージのようだ。

 リブラが実際に「価値の乱高下」を防ぐことができ、100社以上の参加を見込む企業群が、スマホ上での「リブラ」を簡単に利用できるさまざまな仕組みを提供することになれば、利用に火がつく可能性もある。クレジットカードにひもづけたスマホ決済などを提供する日本の大手にとって、脅威になるおそれもある。

 さらに、FBらが見込むのは、途上国などでの国境を越えた送金需要だ。世界には、途上国などを中心に、銀行口座を持たない人が17億人に上るという。そうした層がスマホ上のアプリで、「リブラ」を介して、お金を簡単かつ、きわめて低い手数料で送受信できるようにすることを、FBらは狙う。

 世界各国間の送金はこれまで金融機関が握ってきたが、プラットフォーマーとも呼ばれる米IT大手のFBが、送金や決済市場に本格参入する形だ。世界の個人の間のお金のやりとりに地殻変動が起きる可能性もありそうだ。

 興味深いのは、28社の創始メンバーに金融機関が含まれていないことだ。それは銀行側の危機感のあらわれとは無縁ではないだろう。

 鳴り物入りでFBらが打ち出した「リブラ」に対して、米国内では早速、懸念を示す声が相次いでいる。

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