この金鉱(工場)の内部を、特別な許可の下に撮影した。リサイクルする回収物は高温の炉で焼かれたり、溶かされたり、強力な酸で液化される。つまり溶解・還元・ろ過を繰り返すことで精錬され、99.99%まで純度を高めていく。こうしてできたビーズ状の金を「笹吹き」と呼び、これを再び溶解して成型・刻印すれば、「金の延べ棒」の出来上がり。

 実際に見ると、「はぁーっ」「おおーっ」という言葉しか出てこない。持たせてもらうと「うわっ」と手が下がり、「重っ」。重さ約12.5キロ(400トロイオンス)の金の延べ棒のお値段は19年6月時点で約6千万円也。これ一つでちょっとした都内新築マンション1軒分だ。

 6月に大手貴金属会社の国内金小売価格は1グラム5千円台に乗った。月々3千円程度から始められる「純金積立」により金は投資初心者からの人気も高いが、この値上がりを受けて金地金を売却する動きも加速。投資としての金に注目が集まる中、現物の金は意外にも身近なものから作られているのだ。(ライター・伊藤忍、編集部・中島晶子)

AERA 2019年7月1日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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