「彼女はバレエで留学をしてたのに、プロの道が叶わなくなった。そして芝居の道に進むことを決めたんです。あのときは自分の気持ちを吐露した、長い長い手紙をくれました。つらかったこともあると思いますが、私としてはどこかで両親の仕事ぶりを見てくれていたのかな、と嬉しい気持ちもありました」

 いまも一日の終わりに、その日の出来事を3人で話すのが楽しいとニッコリ。家族を包み込むあたたかさ、その幸福感がそのままアルバムにも映る。

「私、焦っていたり余裕がなかったりしても、周りにそう見えないみたいなんですよね。今回の歌もすごく汗をかきながら、必死に歌ってるんですけど、出来上がってみたら自分でも『あら、ふんわりしてるわ』って(笑)。これって損じゃないかしら、と最近思うんですけど」

 今回は作詞にも挑戦した。実は、挑戦者でもある。

「同じことを繰り返すより、新しいことに挑戦したいタイプかもしれません。体力もモチベーションも落ちてくる年代だからこそ、いかに前向きな気持ちを持ち続けられるかが大事。何事もシリアスに考えすぎないように、自分をガチガチに固めないように心がけています。少しの隙間があったほうが、思いがけないところから何かが入ってきたり、助けてもらったりできる。そこから新しいものを吸収して、また次に行きたいんです」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2019年6月10日号