「中学入学時は、そこそこ英語ができるようになればと思っていた。まさか自分がロンドン大に留学するとは」

 土屋さんの意識を変えたのは、高1の夏に体験したスリランカの青少年たちとの交流だった。

「日本とはまるで違う文化や宗教観に衝撃を受け、もっとスリランカの研究をしたいと思うようになりました」

 南アジアの研究に力を入れている大学を探し、SOAS校がアジア、アフリカ研究の屈指の大学だということを知った。選考のエッセーはその場でテーマが出されるため、英字新聞を読んで要約し、感想を書くなどして英語での記述力を鍛えた。エッセーとスカイプでの面接を無事パスし、合格をつかんだ。

 女子を伸ばすもうひとつの原動力はキャリア教育で、「なりたい自分をイメージさせることが、進学のモチベーションにつながる」(森上代表)。GMARCHで最も大きな6.5という伸びを見せた神奈川学園は、00年に「21世紀教育プラン」を設定。平和学習やフィールドワークを通して生きる力、学ぶ力を育てている。

 前出の土屋さんと同じ佼成学園女子で学んだ徳久愛華さん(19)は、「少数民族などマイノリティーの助けになりたい」という思いを原動力に、早稲田大学法学部へ進学した。きっかけはクラス全員が参加したタイでのフィールドワーク研修で、「山岳民族のカレン族と一緒に畑を耕し生活することで、親しみを感じるようになりました」と振り返る。

 教頭の西村準吉教諭は、「本校は入学時の偏差値が比較的低いため、生徒が自分を不当に低く評価する傾向があり、それを払拭する取り組みを続けています。生徒は誰でも潜在的な力を秘めている。きっかけを与えれば驚くほど成長します」

 生徒の自己肯定感を高めることが、学力を伸ばす鍵だ。(ライター・柿崎明子)

AERA 2019年6月10日号より抜粋