12年から「学力を伸ばす学校」の一覧表作りを始めた小泉さんは、「入る時の難易度に比べ、大学の合格実績を上げている学校は、今後ますます注目を集めるだろう」と話す。

 例えば筑波大附駒場は大学の合格実績がトップだが、入学時の偏差値も高いので、ここでいう「お得」な学校にはあたらない。

 こうしたことを念頭に国立難関の表を見ると、世田谷学園が9.2と抜群の伸びを見せている。8.3の桐朋が続き、城北、巣鴨、攻玉社が6.0以上と、中堅上位校が健闘。芝、逗子開成、東京都市大付も4.0以上の伸びで迫っている。いずれも面倒見がよく、行事が盛んという共通点がある。

「共学人気に押されて別学の難易度が下がり、入りやすくなった。ただし、これらの男子校は以前と変わらない大学実績を上げているので、結果として伸びにつながりました」(森上教育研究所の森上展安代表)

 学校の規模で比較すると、小規模校の方が機動性に富むため、実績を出しやすいという。世田谷学園も、1学年約200人というメリットを生かしている。毎年、各教科の教員が集まり、その学年の特性を考慮してカリキュラムの微調整を行う。中高の職員室が一緒なので、情報を共有できるのも強みだ。中1は勉強の習慣を身につけるため毎日、英数国の宿題を出し、週に1度、小テストを実施して知識の定着をはかる。定期テストの2週間前には学習計画表を提出させ、担任がアドバイスしてバランス良く勉強するように指導する。広報部長の宝地戸通至(ほうちどゆきのり)教諭は言う。

「まずは学びを習慣にするためのレールを敷く。早いうちにしっかり身につければ、自然と自分から勉強するようになります」

 5年生(高2)から文系と理系に分かれるが、国立型のカリキュラムを組んでおり、高2までは数学が必須だ。検定教科書のほかに、教員が作成したオリジナル教材も併用している。

「検定教科書は中学、高校で内容に重複があるので、そうした点を解消し、数学などは演習問題を中心とした編纂にしています」(宝地戸教諭)

 冒頭の竹安さんも「世界史の教材はまとまっていて、クオリティーが高かった。数学が苦手だったので、基礎的な問題に戻って復習しました」と話す。

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