Ralph Fiennes/1962年生まれ。88年ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー入団。92年映画「嵐が丘」で主演デビュー以降、「シンドラーのリスト」「イングリッシュ・ペイシェント」ほか数々の映画に出演。2011年「英雄の証明」で監督デビュー(撮影/遠崎智宏)
Ralph Fiennes/1962年生まれ。88年ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー入団。92年映画「嵐が丘」で主演デビュー以降、「シンドラーのリスト」「イングリッシュ・ペイシェント」ほか数々の映画に出演。2011年「英雄の証明」で監督デビュー(撮影/遠崎智宏)
「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」/ルドルフ・ヌレエフの前半生を描く。5月10日から全国公開 (c)2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS
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「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」発売元:アップリンク/販売元:ポニーキャニオン 価格3800円+税/DVD発売中 (c)British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016
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 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【映画「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」の場面写真はこちら】

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 バレエをかじったことのある人で、20世紀最高のバレエダンサーの一人、ルドルフ・ヌレエフの名を知らない人はいないだろう。

 映画「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」はヌレエフの幼少期から、彼が東西冷戦只中の1961年に祖国ソ連を出てパリで亡命するまでの前半生を描く。

 メガホンをとったのは、本作が3本目の監督作となる英国を代表する名優レイフ・ファインズ。93年に刊行されたヌレエフの評伝を読んで心掴まれた。以来、20年以上の時を経て映画を完成させた。

「時間がかかった理由は簡単には言えませんが、突き詰めれば、一人の若者の個性に引かれたんだと思います。夢を実現しようという魂に心を動かされました。アーティストとして自己表現をしていく姿は私にも共通します。この物語は冷戦という文脈の中で個よりも団体に重きを置いていた、ソ連という国に生まれた人間の個としての選択、表現の自由に触れている。そんなところにも心引かれました」

 ファインズ監督は本作を「バレエ映画ではない。一人の若者がこうありたいと思うことを実現していく物語」と話すが、実際バレエダンサーになるには遅い17歳でレニングラード(現サンクトペテルブルク)のワガノワ・バレエ・アカデミーの門を叩いたヌレエフはとにかく高みを極めるために手段を選ばない。

 ダンサーとなるために徹底して自己訓練する一方、指導者を代えてほしいと直訴したり、国に指定されたバレエ団を拒否したり。一般常識では考えられないことを平気でやってのける。だからこそ、超一流になれるのかと納得もさせられる。

 映画化にあたって一番の挑戦は、「ヌレエフを演じられる人はいるのか」だった。「ロシア語が話せること」を絶対条件に8、9カ月かけて探した。最終的に4、5人まで絞り込み、選ばれたのがオレグ・イヴェンコだ。

「映画の世界ではよく『カメラが恋をする』ことがスターの資質だと言いますが、彼はそれを持っていました」

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