「そもそも理解がないだろうなというのがあります」

 と、都内の会社で働くゲイの男性(37)は話す。

 今の会社はダイバーシティー(多様性)に力を入れ、年に1度はダイバーシティー研修を行い、先進的な会社であることをアピールし、毎年GWに開催される国内最大級の性的少数者のイベント「東京レインボープライド」にも出展している。しかしそれは表向きのこととしか感じられない。いくら研修を行っても、普段の上司や同僚の言動などからLGBTに対する理解があるとは到底思えないのだ。

 そんな職場でカミングアウトして自分の立場を悪くしたくない。職場では「彼女がいる」と話し、結婚のことを聞かれると「まだ遊びたいから」とごまかしている。男性は言う。

「波風を立てて、仕事に悪影響を及ぼしたくない」

 カミングアウトをするかしないかは個人の自由だ。強制するものでもされるものでもない。問題は、職場ではその自由が奪われていることだ。(編集部・野村昌二)

AERA 2019年4月29日号-2019年5月6日合併号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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