猫専門病院「Tokyo Cat Specialists」の山本宗伸院長に、腎臓病の検診を再現してもらった。体重の変化や体毛のつやなどをチェックするという(写真/片山菜緒子)
猫専門病院「Tokyo Cat Specialists」の山本宗伸院長に、腎臓病の検診を再現してもらった。体重の変化や体毛のつやなどをチェックするという(写真/片山菜緒子)
この記事の写真をすべて見る
しょうゆさしで、ちゅーっと吸います(写真/横関一浩)
しょうゆさしで、ちゅーっと吸います(写真/横関一浩)
当てはまれば、腎臓病の疑いあり「NyAERA (ニャエラ) ネコの病気と老い」から
当てはまれば、腎臓病の疑いあり「NyAERA (ニャエラ) ネコの病気と老い」から

 高齢の「宿命」のように受け止められてきた腎臓病。初期療法食による対症療法の充実や、夢の治療薬の開発も進み、様相は一変しつつある。AERA増刊「NyAERA (ニャエラ) ネコの病気と老い」から腎臓病の治療法を紹介する。

【尿の色が薄い、口臭がひどい… 猫の腎臓病のサインはこれだ!】

*  *  *

 キャンペーンのきっかけは、企画会議での連想ゲームのような掛け合いだった。

「猫といえば魚だよね」
「そういえば、魚形のしょうゆさし、あったよね!」

 外資系製薬会社「ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン」(BI社)と化学メーカー「花王」の両社が昨年10月からコラボ展開している「Fish Save Cats」(しょうゆ差しが、猫の命を救う?)。プラスチック製の魚形しょうゆさしの空容器を無料配布し、猫の飼い主に自宅での採尿を呼び掛けるキャンペーンだ。「普段は猫に食べられている魚が猫を救うというコピーはキャッチーで、広くアピールできると考えました」

 こう振り返るのは、BI社の佐藤善生アシスタントマネジャー(39)だ。

 猫の病気の約50%が腎臓病をはじめとする泌尿器系の疾患。早期発見するには定期的な尿検査が欠かせない。慢性腎臓病は早期から尿比重の低下が認められるほか、尿に含まれるたんぱくや糖、液体の酸性・アルカリ性の度合いを示すpH(水素イオン指数)を分析することでさまざまな病気の予防につながるからだ。

■通院のハードル下げる

 しかし、猫にとって通院は大きなストレス。猫と飼い主に来院のハードルを下げてもらうにはどうすればいいか││。この課題にチームで検討を重ねた末、ひねり出したアイデアが「魚形しょうゆさし」の活用だった。

 採尿には、尿をチップで固めずに通過させ、シートで吸収する2層式トイレがおすすめ。尿を吸収する下部のトレーのシートを外せば、トレーにたまった尿を採取できる。撥水(はっすい)剤配合の木製チップを採用している花王の製品は尿を吸着せず、尿成分にも影響を及ぼさないという。

 現在800施設を超える全国の動物病院がキャンペーンに賛同。受付窓口などに両社が随時提供する魚形しょうゆさしを設置、配布している。通常1千~2千円で検査してくれるという。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」でキャンペーンの普及を呼び掛けている成城こばやし動物病院(東京都世田谷区)の小林元郎院長(59)はこう絶賛する。

「スポイトや注射器といった医療器具を提供して自宅での採尿を飼い主さんに託すこともありますが、医療行為のように捉えて尻込みする人もいて、なかなか浸透しません。親しみやすさや気軽さという点で、しょうゆさしを活用するアイデアは秀逸です。窓口で興味を持った飼い主さんに採尿の医療的意義を説明するきっかけにもなっています」

著者プロフィールを見る
渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

渡辺豪の記事一覧はこちら
次のページ
尿が増えたり、色が薄くなったり…