3年間で1400人もの留学生が所在不明になった東京福祉大学。6割超が留学生といういびつな姿を生んだのは、ビジネス至上主義の絶対権力者だった。
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同大の留学生急増を支えたのが、16年度から始めた「研究生」という形での募集方法だ。
「日本留学がベトナムやネパールなどの東南アジアの若者の間でブームになった結果、大学も系列の専門学校も日本語学校からの留学生でいっぱいになった。そこで考えられたのが、定員のない研究生での受け入れ方だった」(同大関係者)
研究生とは原則1年間、学部生になる準備などをするコースだ。このコースに3年間でおよそ5700人が入学。所在不明となった約1400人の大半が、この研究生たちだ。都内の日本語学校幹部はこう話す。
「アルバイトに精を出したせいで学校の出席率が低く、日本語能力が足らずに進学も就職もできない留学生が、それでも日本に残りたいと言ったとき、無条件で受け入れてくれる大学の筆頭が東京福祉大の研究生だった」
留学生たちはなぜ「消えた」のか。この幹部は言う。
「留学ビザで許される週28時間を超えて働いていることがばれ、ビザを更新できずにそのまま帰国したり、逃げたりすることが考えられる。また、学校を退学、除籍となれば在留資格が失われることを知らず、ビザ更新直後に学校を辞める人もいる」
大学側も、留学生の行方がわからなくなる可能性は織り込み済みだった可能性がある。同大の関係者は言う。
「研究生の学費は年間62万8千円。それを最大6分割で支払うことができるので、1回当たり10万円。少しでも回収しようとしていたのではないか」
増え続ける学生に、北区の王子キャンパスでは、銭湯の2階やアパートの一室を授業に使用するなど、教室不足が深刻化していたが、異論は出なかった。前出の現役職員は言う。
「キャパシティーを超えた留学生の受け入れも中島恒雄元理事長の方向性である以上、おかしいと思っても誰も声を出せなかった」