竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
スマホは便利なツールですが、いったん拡散された事柄を取り消すのは難しいことを認識する必要があります
スマホは便利なツールですが、いったん拡散された事柄を取り消すのは難しいことを認識する必要があります

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 昨今、SNSによる「不適切動画」が社会問題となっています。食品を不衛生に扱ったり、厨房の什器でいたずらをしたりする動画がSNSにアップされ、それが毎日のように発覚し、企業も対応に追われています。なかにはコンビニの従業員による映像もあり、ローソンも決してひとごとではありません。

 まず、こうした動画をアップする動機は何でしょうか。誰もやっていない新しいことで注目を集めたい、とにかく面白いことを、仲間内だけだから少々羽目を外しても大丈夫、など理由はさまざまあるのかもしれません。

 でも、ここで考えなくてはならないことがあります。誰もやっていないことは、本当に「新しい」ことなのか。人が不快になることで盛り上がろうとすることが、本当に「面白い」ことなのか。誰もやっていないことの中には、そもそも新しいことでもなんでもなく、単に「やってはいけないので誰もやっていない」ことがあるということ。

 加えて、スマホを使うリテラシーの欠如が重なり、動画が拡散される事態になっていると思います。

 不適切な投稿の拡散においては、関わった大半の人たちが、「ここまで大ごとになると思わなかった」と言っているそうです。投稿者自身の個人情報がネット上にさらされ、生活に支障をきたすケースもあると聞きます。このような事態は未来ある若者にとって、あまりに大きな代償です。

 ローソンでも、過去にSNSでの不適切な投稿が大きな問題になりました。以来、現場では店舗で働く仲間を守るためにも啓発動画を見て頂いたり、SNS投稿に対する啓蒙活動や指導を行ったりしています。それでもいつ同じことが起こるのかわからないのが、SNS時代の怖さです。

 若い世代はスマホと一緒に成長します。同時に、スマホで広がる自由な世界の先にはとてつもなく重い責任があるのだと、しっかり教育していくことも、大人の責任だと感じています。

AERA 2019年3月11日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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