実物資産としての金にこだわらないなら、SBI証券、マネックス証券、楽天証券の3社がインターネット専業証券ならではの低コストで純金積み立てを取り扱っている。毎月の積立額も、田中貴金属や三菱マテリアルは3千円以上で1千円単位だが、ネット証券は1千円以上で年会費もなく、よりハードルが低い。

 積み立てでなくてもいいから一番安く金に投資したいなら、金のETF(上場投信)を買う手もある。株式と同様に市場に上場しており、リアルタイムで値が動いているので、機動的にかつ安く取引できる。

 純金積み立ては、積み立てという名前こそついているが貯金ではなく投資なので、値下がりするリスクがある。

 これまでの金価格の推移を見てみよう。2月12日現在、日本で金を買うときの価格(国内金価格・田中貴金属公表価格、税抜き、以下同)は1グラムあたり4665円。09年の年間平均は同2951円、14年は4340円。10年かけて約1.6倍になっている。

 これらの国内金価格は、世界的に取引される海外金価格を元に決まる。海外金価格はドルベースなので、為替相場の影響も受ける。円高になれば国内金相場は安くなり、円安なら高くなる仕組みだ。その時々の国際情勢によっても金価格は動く。株と異なり、金がいきなり無価値になることはないが、元本は保証されない。

 一方で、積み立ては価格変動リスクを抑える働きがある。毎月一定額を機械的に買い続けるので、金の価格が高い時は少ない量を、低い時は多くの量を買うことになる。放っておいてもお買い得なタイミングでたくさん買ってくれるので、平均購入価格を押し下げる効果が期待できるのだ。金価格下落のニュースを見ても嘆かず、“今月はお得にたくさん買えるぞ”とにんまりしていればよい。

「リタイア後に、積み立てた地金を売却する時も、一度に換金するのではなく、2カ月に1回など時期をずらしながら、少しずつ取り崩すことをおすすめしています」(加藤さん)

 金のデメリットとしては、長期保有しても配当などのインカムゲインが一切ないことが挙げられる。株でいう配当や投資信託の分配金にあたるものが発生しないので、金価格の上昇だけが利益の源になる。(ジャーナリスト・栗林篤、編集部・中島晶子)

AERA 2019年2月25日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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