1キロの地金のサイズは113×52×10ミリで、現在約500万円。1トンの金鉱石から採れる金は3グラム程度、採掘コストは10年前の5倍になり、需給は逼迫(撮影/写真部・大野洋介)
1キロの地金のサイズは113×52×10ミリで、現在約500万円。1トンの金鉱石から採れる金は3グラム程度、採掘コストは10年前の5倍になり、需給は逼迫(撮影/写真部・大野洋介)
【田中貴金属工業】貴金属リテール部長 加藤英一郎さん(51)/1990年入社、2015年から現職。企業間の貴金属地金売買に携わるエキスパート。海外造幣局や歯科・宝飾業界への人脈も広く、貴金属市場を熟知(撮影/写真部・大野洋介)
【田中貴金属工業】貴金属リテール部長 加藤英一郎さん(51)/1990年入社、2015年から現職。企業間の貴金属地金売買に携わるエキスパート。海外造幣局や歯科・宝飾業界への人脈も広く、貴金属市場を熟知(撮影/写真部・大野洋介)
主な純金積み立てサービスの年会費と手数料(AERA 2019年2月25日号より)
主な純金積み立てサービスの年会費と手数料(AERA 2019年2月25日号より)

 金が売れている。販売量は前年を4割も上回り、窓口は満席。「守りの資産」とされる金の人気は国際情勢や老後への不安の表れだ。ただ、老若男女が金に群がる理由はそれだけではない。

【主な純金積み立てサービスの年会費と手数料はこちら】

*  *  *

 平日の昼間、東京・銀座の貴金属店「GINZA TANAKA」を訪れる客の目当てはジュエリーだけではなかった。店舗ビル4階の相談ブースは記者が取材していた3時間弱の間、常に満席。順番待ちが出るほどの盛況ぶりとなっていた。相談内容は金地金の売買、純金積み立ての申し込みが中心だ。

 田中貴金属工業が公表した資料「2018年の資産用金地金の取扱量」によると、金の販売量は前年比約4割増、買い取り量は前年比約2割減と、買い需要の優勢がうかがえる。

 同社貴金属リテール部長の加藤英一郎さんに聞いた。

「ここ数年は会社員や主婦のお客さまが金投資を始めるケースが増えました。特に40~50代の方が増えています」

 以前は富裕層が圧倒的に多かったが、今は老後の備えが気になるミドル世代がメインプレーヤーということだ。

「金の販売量が激増している理由は、米中経済摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱といった世界情勢への不安によるものと思われます。インフレ懸念から、預貯金の一部を金に換える動きも増えています」(加藤さん)

 キーワードは「不安」。金は守りの資産の代表格なのである。

 金投資の入り口となっているのは、毎月、3千円ずつ買い増していく純金積み立てだ。申し込みをインターネットで完結させられるようになったので、気軽に始める人が増えた。

「既存顧客の9割は“紙”による申し込みだったのですが、ここ1年の新規会員の申し込みは7:3でインターネット経由が優勢です」(同)

 インターネット会員でも、既存顧客と同様に店頭での相談やカスタマーサービスが受けられるので、サービスレベルに差はない。口座開設後、一度金額を設定すれば、後は銀行口座から自動的に引き落とされる。ほったらかしで資産形成ができるので、多忙なビジネスパーソンでも取り組みやすい。

 純金積み立てを取り扱う貴金属会社は、前述の田中貴金属と三菱マテリアルの2社が大手だ。投資としての金だけでなく、現物の地金、地金型金貨(ウィーン金貨ハーモニーやメイプルリーフ金貨など)、宝飾品と、多彩な形で受け取ることができる。将来の換金時も、金の品質は折り紙付きなので「売れないリスク」が一切ない。

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら
次のページ