医師が選ぶがん検診【大腸がん】(AERA 2019年2月11日号より)
医師が選ぶがん検診【大腸がん】(AERA 2019年2月11日号より)
医師が選ぶがん検診【肺がん】(AERA 2019年2月11日号より)
医師が選ぶがん検診【肺がん】(AERA 2019年2月11日号より)

 がんの治療で重要なのが、早期発見。医師たちはがんを見つけるために、どんな検診を受けるのか。医師専用コミュニティーサイト「MedPeer(メドピア)」の協力のもと、がん診療経験のある医師540人にアンケートを実施。さらに『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者、近藤慎太郎医師にも話を聞き、最新のがん検診に迫った。

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 都内在住の会社員男性(44)は、喫煙歴は20年を超える。毎年、会社指定の成人検診を受けている。妻子のことを考えれば、自分のがんリスクは気になる。受けている肺がん検診は、胸部エックス線だ。

「特に不調もないので、いまのところいいかなと思っています」(男性)

 肺がんの検査は、胸部エックス線が一般的だ。しかし、胸部エックス線では、「肺がんを確実に見つけることは難しい」と近藤医師は言う。

「胸部エックス線は肺がんの死亡率を30~60%下げると言われていますが、がんを見落とす恐れがあります。肺の中心部を肺門部、周辺を肺野部といいますが、血管や心臓などほかの臓器と重なる肺門部は死角になりやすいんです」

 こうした見解は、医師の間では常識のようだ。アンケートによると、肺がん検査に胸部エックス線のみを選択した医師はわずか11%で、喀痰(かくたん)細胞診との併用を合わせても18%に留まる。逆に、胸部CT(コンピューター断層撮影)ないしは低線量CT、もしくはそれに加えて喀痰細胞診を選択する層が80%にものぼった。

 国立がん研究センターが公開するがん情報サービスによると、肺がんの患者数は日本のがん患者全体の中で3番目に多く、死亡数は最も多い7万4千人(2016年)にのぼる。

 肺がんのリスクは、喫煙者ほど高い。特に喫煙者の場合、胸部エックス線だけで安心するべきではないという。

「喫煙でできやすいのが、エックス線で見つけにくい肺門部のがんです。肺野部のがんより肺門部のがんは悪性度が高く、がんになった場合の5年生存率が低い。喫煙者は痰の検査も行うことが望ましい。肺門部のがんは痰にがん細胞が混ざりやすいからです」(近藤医師)

 早期発見に万全を期すなら?

「胸部CTは、エックス線には映らない早期のがんも発見できます。アメリカの臨床試験では、CTが肺がんの死亡率を20%下げたと報告されています」

 ただし、健康な人がむやみやたらにCTを受けることは勧めないという。

「CTに過剰診断を懸念する声もあります。また、CTを受け続けることによる医療被曝の問題もあり、50歳未満には推奨できないといわれています」

 医療被曝に特に気をつけるべきは、乳がんの家族歴がある人だという。

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