毒親フェスinアートフェスティバルの会場。正面から右側が「虐待」、左側が「望む世界」をテーマに区切られ、30点の絵が展示された(撮影/編集部・澤田晃宏)
毒親フェスinアートフェスティバルの会場。正面から右側が「虐待」、左側が「望む世界」をテーマに区切られ、30点の絵が展示された(撮影/編集部・澤田晃宏)
浅色さんは「想像していたより集まった。今年も同じ取り組みを実施したい」と話す。名古屋からの出展者2人は会場を訪れた(撮影/編集部・澤田晃宏)
浅色さんは「想像していたより集まった。今年も同じ取り組みを実施したい」と話す。名古屋からの出展者2人は会場を訪れた(撮影/編集部・澤田晃宏)

 1994年に200万部を超えるベストセラーになった『日本一短い「母」への手紙』(福井県丸岡町編、大巧社)。母への感謝の思いをつづった手紙集だ。では、その3年後に出版された『日本一醜い親への手紙』(メディアワークス)をご存じだろうか。親から虐待を受けた人の手紙を公募し、100人分をまとめた同書は、児童虐待関連本では異例の10万部超が売れた。

【会場に展示された作品はこちら】

 同書を企画したフリーライターの今(こん)一生さん(53)は2017年、再び虐待経験者の手紙を公募し、100通を『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)にまとめた。

「両親へ。できることなら、あなたたちを惨殺したい」

 収められている手紙の一節だ。今さんは言う。

「この20年、虐待件数は一度も減っていない。防止策が根本的に間違っているからだ。改めて広く虐待の深刻さを知らしめる必要があると考えました」

 全国の児童相談所が対応した虐待の総件数は初調査の90年度から増え続け、昨年度は13万件を突破。記憶に新しい東京都目黒区の5歳女児虐待事件を受け、政府は児童相談所に勤める児童福祉司の増員を急ぐが、問題は人手だけではない。

「最大の敵は親権です。虐待する親から子どもを長期間引き離すには親権者の同意が必要で、同意が得られなければ家庭裁判所に申し立てる必要がある。親権の壁は高く、子どもはいつまでも主従関係を強いられる。虐待防止策を改めない限り、今後も子どもは親に殺され続ける。虐待を受けた人が声を上げ、当事者目線の防止策を考えていくことが必要です」(今さん)

 東京都の田中ハルさん(42)は「虐待サバイバー写真展被写体募集in東京」というプロジェクトを進めている。自身も虐待経験者だ。

「虐待事件の報道も増え、自分に何かできないかと手にしたのが趣味のカメラでした」

 ネット上で「親からの虐待を生き延びた人」を公募。昨年12月時点で10人を撮影した。ホームページで公開するほか、15人の撮影が終われば写真集にまとめたいと考えている。

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