その中で、累計会員数が800万人超という最大手が前出のペアーズだ。運営元のエウレカによればペアーズをきっかけに交際・入籍した人は12年のサービス開始から累計で18万人超。マッチング率の高さを支えるのはAIの徹底活用だ。「会員数が増えるほどデータが蓄積され、精度の向上につながっている」(エウレカの金子慎太郎CTO<最高技術責任者>)。

 特にAIにとって重要なのは「コミュニティ」のデータだ。

「ユーザーはどういうコミュニティに登録するかによって、無意識のうちに好みや価値観、もっと言えば『生きざま』まで表現している。AIはそこを読み取ってくれるんです。合コンだと、一般ウケを気にしがちですが、ここでは『マンガが好き』などオタクっぽい趣味や『バツイチ』も立派なその人の特徴。『そういうあなたが好き』という人と巡り合える」(同社広報)

 ペアーズでマッチングしたカップルのデータからは、本人さえもが気づかない相性も見えてきた。例えば「WEB業界」のコミュニティに所属する人と「競技ダンス好き」は相性がいい。「京都府北部」と「宮崎市」といった地域の組み合わせや、「温泉行ったら、絶対朝風呂」という人と「ラムレーズン味が好き」など謎すぎるものも。「出会いは本人の思い込みを超えたところにある」(金子さん)らしい。

 同社ではアルゴリズムの精度をさらに高めるため、昨年12月に東京大学大学院の山崎研究室(情報理工学系研究科)との共同研究も開始した。「恋活・婚活」と「東大」も意外な組み合わせだが、山崎俊彦准教授によれば「恋活・婚活マッチング分野におけるテクノロジーの活用は、世界的にも注目を集めている」。研究では、これまで活用しきれていなかったログインの時間帯や頻度、使っている写真に写り込んでいるモノや風景などさまざまなデータを使って「より質の高いマッチングの実現を目指す」(山崎さん)という。(編集部・石臥薫子)

AERA 2019年1月21日号より抜粋