稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
仕事のギャラでまさかのクオカードをいただく。私には使える店がほとんどないんですが…(写真:本人提供)
仕事のギャラでまさかのクオカードをいただく。私には使える店がほとんどないんですが…(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】仕事のギャラでまさかのクオカードをいただく

*  *  *

 このところずーっとモヤモヤしているのが、消費税アップに伴う「ポイント還元」問題。だってお国がですよ、増税に伴う景気対策として、キャッシュレスで買い物をした人だけお得になるシステムを導入すると。いや、これって公平なの? 税の基本は何と言っても公平性でしょーが? などと一人フンガイしているのは何を隠そう、私バリバリの「現金主義者」であるからして。会社辞めたらキャッシュカードはもう作れないヨと脅されそれだけは手放す勇気が持てず不本意ながら残したものの、それ以外はスイカもワオンも各種ポイントカードも持っておりません。

 よって知人と電車に乗るときは一人いちいち切符を買いに行き、他の全員がぼーっと待つはめに。しかし本人全く上機嫌。いやー待たせたネ、っていうかみんな切符いらないの? もちろん(いらねーよ!)という皆さまの心の声が盛大に聞こえます。ああ全くの絶滅危惧種だねこりゃ。だからキャッシュレス減税も「公平(変人は無視してよし)」ってことなんだねきっと。

 そこまでしてなぜ絶滅危惧種であり続けるのかといえば、一にも二にも快適だから。財布はブタ財布どころかカードがないから超スッキリ。で、肝心なのは心もスッキリすること。カードがあると、どうせならポイントたまるところで買おうと思い、するとつい余分なものも買うのである。つまりは人生をカードに踊らされる。「お得」って、実は企業にとってのお得……?

 私はそのことにカードをやめて初めて気づいたのです。スッキリ財布とともに訪れた「手錠が外れた超爽快感」に気絶しそうになり、ああ私はオリの中にいたのだと思い知ったのであります。

 それだけじゃない。今の我が暮らしの生命線である、人と人をつなげる町の極小個人店はほぼ現金決済。カードやポイントが使える大手に囲い込まれることは、こうした豆腐屋や米屋に打撃を与える行為でもある。だからこれは戦いです。へなちょこゲリラ戦だが負けねーぞ! ということで仲間を募っております。

AERA 2019年1月14日号

著者プロフィールを見る
稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

稲垣えみ子の記事一覧はこちら