宇宙飛行士のような本格的な訓練が必要ないのも、サブオービタル旅行の利点だ。米国では04年に改正された「商業宇宙打ち上げ法」で搭乗者の自己責任を原則とする有人宇宙旅行が解禁されており、3日間の米国での準備訓練を含め最短7日間で参加できる。

 クラブツーリズムの1700人の顧客を対象にした調査によると、600万円が宇宙旅行の「適正価格」と考える人が多いことがわかった。

 一方、35年時点の年間市場予測(14年発表)によると、サブオービタル旅行は宇宙産業全体でもトップの最大3万1500人、1500億円の需要を見込んでいる。

 宇宙空間を経由する弾道飛行は、地球上の2地点間の移動を飛躍的に短縮させることにもなる。地球のどこでも数時間で結ぶ飛行技術が確立されれば、既存の大手航空会社の参入により需要がケタ違いに増大することも予想される。浅川社長は言う。

「サブオービタル飛行の安全性が確立されれば、2地点間飛行の需要も相まって500万円台の宇宙旅行ツアーも将来夢ではないかもしれません。商業機の1号機が飛べば、世の中の受け止めが変わるでしょう。今は嵐の前の静けさ、とも言えます」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年1月14日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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