米国株につられて大暴落した日経平均株価。今年の相場については、「万年強気」と言われる証券関係者たちからも弱気の声が聞かれるという。
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ソフトバンクのテレビCMとして放映されていた「白戸家ミステリートレイン篇」で、
「お父さん犬は風呂敷に入れられて身動きができない状態だった。あれがイカン! 手も足も出なくなったことを象徴したのでは……」
と、八つ当たり気味に話すのは、ある証券関係者だ。
米国長期金利の上昇と米中貿易摩擦に端を発し、世界景気が後退するとの見方が強まったことで、日経平均株価は2018年10月の高値から暴落した。
とどめを刺すかのようにムードを悪化させたのは、12月19日に上場したソフトバンクだという。資金調達額で国内最大規模の上場と騒がれたが、取引初日は事前の売り出し価格1500円を超えることはなかった。冒頭の発言は、証券業界のそんな見方を象徴するそうだ。
皮肉なことに18年は戌(いぬ)年だ。えとにちなんだ相場格言では「戌笑い」とある。年後半に失速したことで「笑い泣き」となったわけだが、ともあれ格言は「亥(い)固まる」と続く。いつもなら、「亥年の19年は下値が固まる」との期待が聞こえてくるはずだ。
しかし、「万年強気」と言われる証券関係者でさえ、今年の相場の見立てはトーンダウン気味だ。新天皇の即位に伴ってゴールデンウィーク(GW)は10連休となるが、日本の株式市場が10連休なのは初めてのケースとなる。海外マーケットは欧米、アジアとも取引があるので、
「10連休はリスキーだ。GWまでに、手持ちの資産に占める現金の比率を高める手じまい売りが考えられます。国内外の機関投資家、そして特に個人投資家の間で4月まで継続し、相場も下落傾向のままではないか」(証券会社の営業担当幹部)
といった不安の声がある。
今回アエラが専門家3人に聞くと、GW後の見方は分かれた。「上昇する時期もある」とみるのは2人。複眼経済塾の塾長として全国のセミナーを飛び回る渡部清二さんは、
「日経平均など全体は、いったんは反発する。しかし、11月ぐらいの大底に向けて再度下落相場に転じる」
日本IRプランナーズ協会理事長を務める経済アナリストの木村佳子さんも、
「5~6月は高い」
とみている。
「上昇時期もない」と見込むのは、投資情報を発信するカブ知恵の社長、藤井英敏さん。
「米国の金融政策に不透明感が強まることや、日本の消費増税による景気悪化リスクの高まりで、さらなる調整局面へ」
と、極めて慎重だ。(証券ジャーナリスト・天野秀夫)
※AERA 2019年1月14日号より抜粋